掲載日 : [2004-11-17] 照会数 : 9116
在日の歴史教科書作り 事実風化させず未来へ(04.11.17)
[ 在日のルーツを学ぶ連続講座の受講生たち(13日、大阪) ]
連続講座スタート
【大阪】民団中央民族教育委員会(李英秀委員長)が主催する『在日コリアンの歴史教科書』(仮称)作成のための連続講座「在日の歴史」が13日、大阪韓国人会館で始まり、滋賀県立大学の姜徳相名誉教授が「在日コリアンはどのようにして形成されたのか」と題して講義した。李委員長はじめ余玉善同委員会副委員長(婦人会中央本部副会長)、主管の民団大阪本部から金昌植団長ら役員と地域同胞、日本市民ら約200人が参加した。
200人参加
主催者を代表して李委員長は「私たちのルーツが書かれた適切な教科書がないということは悲しいこと。今日は在日の歴史を知るうえでの重要な一歩であり、過去から未来へのステップになるとと思う」と同講座の意義を訴えた。
第1回目の講座を担当した姜徳相教授は在日の形成史について、①海峡を渡った朝鮮人労働者②祖国の独立に連帯した在日朝鮮人−2・8独立宣言と在日朝鮮人③在日朝鮮人労働者の定着過程④関東大震災と在日朝鮮人の受難⑤強制連行の時代の5項目に分けて講義した。
まず、1904年の在日はわずか233人と少なく、ほとんどが留学生で労働者は皆無だったが、1910年の併合後の36年間は「1910年代は土地調査事業による土地よこせ、20年代は産米増殖計画による米よこせ、30年代は皇民化政策による人よこせ、40年代は徴用、徴兵による命よこせ、の4つに区分できる」とした上で、農耕民族であった朝鮮民族は、土地政策により土地を奪われ、生きる道を求めて満州やシベリア、日本の炭鉱に流れていったと指摘した。
中でも在日朝鮮人が急激に増加したのは第一次世界大戦後で、好景気であった日本経済界が、朝鮮の安価な労働力に注目、「渡日朝鮮人は労働力を売って生活をする最底辺の労働者となり、海を渡って、農民からプロレタリアートへ転化させられた」と強調した。
また、関東大震災時の戒厳令に触れ「朝鮮人を敵とした戒厳令が、朝鮮人虐殺をまねいたと言っても過言ではない」と批判した。参加者たちは「在日の歴史を系統的に学ぶことは重要だ」「関東大震災の虐殺事実が隠蔽されているのは不当だ」と感想をもらした。
講義を終えた姜教授は「在日の歴史は簡単には言葉で言い表せない。事実は風化しても、言語や歴史認識は継承できる。日本の国際化の架け橋になる意味でも、在日が歴史意識をもつことの意義は大きい」と語った。
連続講座の第2回目は同会館で20日の17時から開かれる。
(2004.11.17 民団新聞)