掲載日 : [2004-12-01] 照会数 : 5670
多彩な活動・自負と課題 全国支団長交流会の報告(04.12.1)
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全国支団長交流会の核になったのが、「ウリ支部ウリチャラン運動」の経過報告だ。全国313支部の模範となる28支部の運動を①戸別訪問・人材育成・国際交流・地域奉仕②会館活用・オリニ事業③高齢者福祉の3つに分け、活動の模様を映像ビデオで紹介した後、支団長らが支部の実情などを補足説明した。支部活性化のカンフル剤として始められた同運動は、昨年11月の支団長交流会で大阪府内の支部が取り組んでいる福祉事業を視察して以降、福岡・久留米支部など着実に他支部にも波及効果を生んでいる。今回の映像資料と冊子「ウリ支部ウリチャラン」の二段構えの広報によって、活動のすそ野をさらに拡大していくことは間違いない。主管局の河政男組織局長は模範となった28支部の運動に手ごたえを感じるとともに、「3年以内にすべての支部に運動が浸透するようテコ入れしたい」と意欲を示した。主要支部の運動の中身を見てみよう。
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世代超え結集の道
戸別訪問・国際交流
東京・江戸川支部(金春植支団長) 地域交流の必要から国際交流課に要望し、30万人が繰り出す区民祭りに今年で8回目の参加となった。毎回チヂミが飛ぶように売れ、収益の一部は区に還元している。今では支部の新年会に区長、区議会議長が出席するなど友好関係にある。団員サービスの一環として、パソコン教室や2人の税理士(役員)が税務申告に応じている。
静岡・清水支部(具龍書支団長) 後継者不足が悩みの種だったが、30代から50代を集めるため親睦会「十日会」を結成し、2カ月に一度集まるようにした。各自が一人ずつ勧誘した結果、人数は倍に。老朽化した会館の改装も実現した。高齢者の親睦会「ムグンファ」は総連の会と合同で敬老会を開催、交流、和合に努めている。市の福祉課から補助金を受けるようになった。
愛知・瀬戸支部(朴仁秀支団長) 事務部長から各課長までが、団員宅の戸別訪問を徹底している。青年会を再建し、本国旅行で若い世代の結束を固めたのも地道な努力の賜だ。次世代の育成のために、副課長らの意見も活発に引き出す。支部の活動は年2回発行のムジゲ新聞で団員に知らせている。来年の愛知万博開催地として、瀬戸物の縁で姉妹結縁した韓国・利川市をはじめ地域交流にも意欲を示す。
愛知・豊川支部(鄭淳台支団長) 県の面積の6分の1が支部の管轄地域だ。範囲が広く、しかも山間部なので、同胞の集まりは容易ではない。そのネックを解消するのが、徹底した戸別訪問と電話作戦だ。総会の出席率は90%。加えてゴルフという共通の趣味をいかした親睦会(TM会)には、2・3世が30人近く集まる。ハングル教室も11月に始まった。
三重・桑名支部(車正博支団長) 6年前の会館新築を契機に、日本のお年寄りも敬老会に招いている。地域の小・中学校で韓国や在日を理解させる多文化共生授業にも取り組む。生徒らが支部で韓国の民俗遊びを学び、チマチョゴリを試着するようになった。ハングル講座は25年前から実施。地域に広報した結果、日本人受講生が多く、彼らは支部の行事にも積極参加している。
三重・伊賀支部(申載三支団長) 市の広報紙にハングル教室の案内を掲載したことで受講生が増加。日本人が半数を数える。勉強の成果を韓国で試すなど、地域交流で支部の存在をアピールしている。また、行政の要望を受け、地域の学校給食のメニューに韓国料理が出るようになった。11月1日付で名称を上野支部から伊賀支部に改称した。
京都・南支部(孫一男支団長) 団費は一律千円。集金する専従者が戸別訪問を欠かさず行う。支部運営も団費でまかない、賛助金はもらわないようにするのがモットー。オリニからお年寄りまで350人もの同胞が集まる4月の野遊会や敬老会の経費も支部負担。韓国ゆかりの地を訪ねる「韓来文化史跡巡回バスツアー」も好評だ。ハングル講座の7割は日本人で占められている。
京都・東山支部(黄勇支団長) 管内に「耳塚」がある。豊臣秀吉が朝鮮を侵略した際に、戦勝の証として持ち帰った同胞の耳や鼻などだ。韓日間の正しい歴史を次世代に継承し、不幸な歴史を二度と繰り返さないため、近隣の人たちと旧暦の9月9日に慰霊法要をとりおこなっている。修学旅行の生徒や金泳三元大統領も訪れたことがある。
広島・豊田支部(申貴子支団長) 昨年2月から障害者のグループホームで、婦人会とともに月2回の韓国料理の給食ボランティア活動を実施している。一人200円の食事代を貯めて、10万円をホームに寄付した。「ハミョン・テンダ」で始めた活動が地域で評判となり、民団の存在が知られるようになった。今では小・中学校から韓国舞踊を教えてほしいと要望が届く。
福岡・若松戸畑支部(尹一秀支団長) 95年に若松、戸畑の両支部が合併した。「民団は何をしているんだ」というクレームも民団新聞の直送に加え、88年から支部だよりを全世帯(約170世帯)に直接手渡すようにしたところ、ほとんど聞かなくなった。地域交流にも目を向け、01年から「あじさい祭り」にも参加、韓国料理や物産販売も評判になっている。
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憩いの場を心がけ
高齢者福祉…温泉ツアーも
大阪・西成支部(崔長煕支団長) 介護の必要がない65歳以上の高齢者を対象に昨年3月、「ふれあいデイハウス」を開設した。支団長の努力が実を結んだ経緯が、昨年の支団長交流会で発表され、大きな反響を呼んだ。それに甘んじることなく、今年9月には介護が必要な高齢者の通所介護事業所「西成サランバン」を稼働させている。
大阪・泉北支部(金徳植支団長) 行き場のない同胞高齢者の現状に胸を痛めていたところ、親交のある府会議員からデイハウス制度を紹介された。築50年の支部の改装費300万円のうち200万円は行政が支援。98年に「和泉ムグンファハウス」の開設後、同胞の出入りが増えた。団費も集まりやすくなった。日本籍同胞からも受け入れを要望されている。
大阪・八尾支部(任龍鶴支団長) 4市2町1村を抱える範囲の広い支部で、02年8月にデイサービス認可を要望した。3カ月置かずに認可がおりて11月に「ふれあい郷・無窮花」が誕生した。月曜から金曜までの週5回、20数人の同胞対象者以外にも日本人高齢者も利用している。
大阪・布施支部(柳在根支団長) 地域の祭りとして定着した東大阪フェスティバルに、民団も実行委員会として参画。それが縁でデイハウス制度の情報を知った。02年4月に支部が運営する「高麗いきいきクラブ」がスタートした。同胞高齢者にとって、憩いの場になっている。食事サービスと健康チェックも受けられる。
大阪・枚岡支部(柳相明支団長) 毎週月・水・金に平均15人のハルモニらが韓国ドラマに目を奪われ、花札に興じ、気兼ねのない時間を過ごす。婦人会が作る韓国料理も楽しみの一つだ。行政は当初、地域でのワクが決まっていると突っぱねたが、ワクがあいたため急きょ01年2月に「街角デイハウス・コヒャン」を開設した。
兵庫・阪神支部(金淵采支団長) 65歳以上の同胞高齢者に月1回、食事会を設けているのが「ウリチプ」だ。支部に気安く来てもらうために、学校給食を参考に考案した。行政の社会福祉協議会に1年かけて働きかけ実施にこぎつけた。年間20万円の補助金がある。県や市の行政サービスの趣旨にそったものなら、行政支援が見込めるという。
兵庫・西宮支部(李成俊支団長) 管内に独居老人10人を含め、高齢者が集う憩いの場がなかった。01年から月1回の食事サービスを始めたが、それだけではマンネリ化するので、カラオケや韓国ビデオの鑑賞のほか、無料散髪やマッサージなども取り入れた。足を運ぶ高齢者の家族は団費を必ず出すようになり、支部行事にも参加するようになった。
滋賀・湖西支部(金炳学支団長) 01年から毎月1回、「トラジクラブ」の会合を開いている。婦人会や団員らが提供した手づくりの野菜や米を使い、婦人会のメンバーが心を込めた韓国料理でもてなす。毎回約25人の出席で、独居老人の場合は支部役員が送迎を担当する。このほか、毎年1回の旅行や毎月1回の温泉入りも好評で、家族の団費集金がスムーズになった。
鳥取・直轄支部(薛幸夫本部団長) 団長に就任後、2カ月かけて130世帯を戸別訪問した。独居、寝たきりをはじめ高齢者の予想外の多さに、民団の創立精神である「相互扶助」を今日にいかしたいと考えた。「アジメ奉仕隊」は9人、高齢者の家庭や施設に入所している同胞を訪ね、安否を尋ねる。アジメたちの交流も深まり、民団への認識が向上していった。
山口・下関支部(金龍一支団長) 高齢同胞の積年の疲れを癒そうと思い立ったのが温泉ツアーだった。しかし、一世の高齢者は自力ではなかなか出向くこともできない。そこへ無料バスの提供者が現れ、大型免許を持っている事務部長が送迎することで念願がかなった。参加者は25人程度だが、実施を心待ちにする表情を見ると、同胞の情愛を感じる。
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パソコンや料理講座
会館活用・オリニ事業
東京・豊島支部(呉太勲支団長) 保険センターを設立・機能化したことで、今では年間400万の収入がある。月一度は保険販売を兼ねて団費集金に歩くため、団員との信頼関係も定着している。ハングル講座、チャング・舞踊講座以外に卓球、カラオケ、書道の講座、韓国ドラマ300本を無料で団員に貸し出す団員サービスもある。ソウル東大門区と友好姉妹都市関係になったことで、区の高齢者給付金の支給が始まった。
埼玉・川口支部(李三鎬支団長) 広報紙「ヘバラギ」を年4回発行し、支部活動や団員に役立つ情報を提供している。支部会館で始まったテコンド教室は、今や地域の日本人も多く参加。手狭になったため中学校体育館を使用している。テコンドが縁で日本人も民団行事にも参加するようになった。同胞らが加入している飲料協同組合も新年会に飲料水を無料提供する。
北海道・函館支部(甲成支団長) 役員に登用した若手課長が02年に発案した「韓国うまいものフェア」が、地域で爆発的にヒットした。1300人もの人が列をなし、ボランティア協力したいという日本人も現れた。地元のユネスコ支部から料理教室の依頼もある。地元紙をはじめとした広報活動の成果だが、「民団函館ここにあり」の熱気がある。
愛知・春日井支部(金昭夫支団長) 支部で韓国食品を販売している。祭祀の買い出しで名古屋まで出かける必要がなくなり、団員に好評のうえ、支部には年間30万ほどの純利益がもたらされる一石二鳥。小・中学校の新入学生に図書券、パスポート申請時の写真を無料撮影、年4回発行の広報紙「マダン」に団員の飲食店の広告掲載など、団員サービスに努めている。
兵庫・尼崎支部(林茂男支団長) 2カ月に一度の支部だよりと分団制度をいかして団員への情報提供に力を入れている。ハングル講座は30年の伝統のもと毎週2回開講しているが、韓流の影響で初級の生徒が増えたため、9クラスに増やした。週1回のオリニ土曜学校と舞踊教室で同胞間のネットワークを堅持している。
兵庫・西神戸支部(崔相俊支団長) 阪神大震災で最も被害が大きかった地域だけに、会館のフル活用でいつもにぎわう支部づくりをテーマにしている。オリニ土曜学校は月3回、ハングル、料理、国楽・風物、パソコン教室はそれぞれは週1回の開講。神戸市の広報紙を活用したことで、団員だけでなく日本人の受講生も一気に増えた。
福岡・福岡支部(姜東俊支団長) 30年前からハングル教室を開いている。日本人受講生が多いが、韓日をつなぐ玄関口という地域性をいかした親善、国際交流の場として位置づけている。この教室の収益は月2回開講のオリニ土曜学校など、民族教育充実化のための財政に活用される。支部だよりの活用で団員の関心も低くない。地域の総連とも合同花見を2回実施した。
福岡・久留米支部(林支団長) 昨年の支団長交流会で刺激を受けた。大阪の支部が取り組む福祉事業を取り入れようと、今年6月に支部会館の1階をデイサービス用に改築した。正式認可を得るための行政交渉はいまだ難航しているが、月1回の高齢者食事会をすでに始めた。管内の総連が閉鎖したため総連同胞もやって来るようになった。
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報告を聞いて
戸別訪問さらに徹底
兵庫・西神戸支部 崔相俊支団長(69)
各支部の成功事業に感動した。なかでも戸別訪問は、民団の運命を左右する最も重要なことだと思う。うちの支部も戸別訪問をやっているが、徹底してやるのはなかなか難しい。今回得た教訓を契機にもっと頑張っていきたい。1世たちがつくり、育ててきた民団を私たちの代で潰すわけにはいかない。
財政安定で活性化へ
大阪・西成支部 崔長煕支団長(54)
広島・豊田支部の成功話は奇跡としか言えない。うちの支部も団員の理解を得て団費の値上げをしたり、郵便物をバーコード化して経費を節約するなど、工夫をしながら財政の安定に努めている。再建にこぎつけた瀬戸支部の青年会の話はうらやましいばかりだ。事情は厳しいが、青年会の活性化に努力していく。
何より団員サービス
東京・品川支部 姜英煥支団長(55)
一番の悩みは、民団組織から離れていく団員が増えつつあるということだ。当然ながら団費収入も減っていくし、組織の活動も縮小する。こういう問題を打開するには、やはり戸別訪問しかないと思う。みんなで知恵を出し合い、団員サービスに徹していくつもりだ。
覚悟新たに取り組む
愛媛県本部 陳信之事務局長(49)
同胞の民団離れが深刻な時代に無から有を生み出し、民団の存在をアピールした豊田支部の活動ぶりは感動的だった。発表されたサクセスストーリーはほかの本・支部が学ぶべきだ。韓国語教育の強化、朝鮮総連との関係改善問題などに新たな覚悟で努力する。
未来担う青年層育成
新潟・新潟支部 柳茂支団長(55)
全般的に先行きがみえないのが現実だ。民団が生き残るための営利事業と組織を動かすための財政確保が絶対必要だ。新潟地域は老人が多い。若者に敬老思想を高めることによって、自ら民団に対する愛情を持つようにする教育も必要だ。誠意をもって青年を育てていくのが、民団の未来を約束する唯一の道だ。
団費徴収率高めたい
大阪・生野北支部 高清禎支団長(65)
どの支部も一生懸命に頑張っていることがよく分かった。これから中央本部がどういう風に導くかによって、民団の運命が決まる。帰化問題にもまじめな対応が必要だ。わが支部もやはり財政問題が一番大きい悩みで、領事業務を手数料取らずに代行するなど、団員サービスを通じて団費の徴収率をより高めたい。
(2004.12.1 民団新聞)