掲載日 : [2004-12-08] 照会数 : 6618
「在日韓国人は隣人」 新潟中越地震から1カ月半(04.12.8)
[ 対策本部の炊き出し ]
民団の救援活動に感謝の声
【新潟】新潟中越地震の発生から1ヵ月半。被災同胞たちは「被害はみな同じだから」と地域と協力し合い、もとの生活を取り戻すのに懸命だ。大打撃を受けたパチンコ業者から「ようやく営業再開にこぎつけた」という知らせも届いた。
厳しい状況のなかにも落ち着きが見え始め、民団新潟の対策本部(李鐘海本部長)には、カルビスープ2500食の炊き出しなど、この間の救援活動に対する感謝が相次いでいる。婦人会員の多くが近所から「炊き出し大変でしたね。ありがとう」と声をかけられ、民団本部にも「これまで意識しなかったが、在日韓国人は隣人だと改めて感じた」といった言葉が寄せられている。
同胞たちも認識を新たにした。長岡市在住の60歳代の被災者は、「何も手伝えなくて申し訳ない。民団は本当にいいことをした」と対策本部を労い、総連の女性同盟役員は婦人会役員に「私たちも救援に懸命だが、民団は良く頑張りましたね」と電話で伝えてきた。
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国籍超え通じた真心
被災地で10日間にわたり救援活動に当たった民団中央組織局の金哲三主任は、「元気をもらったのは自分たちだ」と、次のような一文を寄せた。
「再確認した民団事業の意義」
金哲三(民団中央組織局主任)
「3秒で家が潰れ、いきなりホームレスになってしまった」、「家は残っても生活できない」という被災者たち。焦燥感いっぱいの表情に、自分は何もできないという虚しさが募っていただけに、炊き出し計画が提案されたときは嬉しかった。
メニューは即座に、10種類の具を入れたカルビスープに決まった。炊き出し先の避難所関係者によれば、被災者たちは温かい汁物に飢えているとのこと。仕込みから自ずと気合が入った。
カルビスープは当然、一人ひとりに手渡しされる。自然と同胞と日本人の心の交流になった。ここで、被災者の感謝の言葉をいちいち紹介できないのは残念だが、「在日韓国人という立場の人たちが国籍を問わず、一生懸命炊き出しをしてくれて本当に嬉しい」とむせび、ナベのフタに大粒の涙をぽとぽと落としていた中年男性の姿が忘れられない。切々とした感謝の言葉の連続に、同胞たちも泣き出していた。避難所になっている小学校の校長は、「落ち着いたら、教育の一環として韓国との交流に積極的に取り組む」と語ってくれた。多くの日本人の心情を代弁するものだろう。
潰れた家や陥没した道路に驚き、余震に脅え、道なき道をたどっての被災同胞激励、初対面の同胞たちとのあわただしい炊き出しなど、どれもこれもが初体験という実際の場で、民族や国籍を超えて通じ合う心を誰もが持っていることを知り、勇気づけられた。
多文化共生社会の実現をめざす民団事業の意義を再確認した思いさえした。
(2004.12.8 民団新聞)