掲載日 : [2004-12-08] 照会数 : 7230
同胞観光客の急場救った韓国語 奈良の救急隊員(04.12.8)
[ 民団奈良県本部の韓国語教室で勉強を続ける田宮さん ]
「アパヨ」「アンシン・ハセヨ」
【奈良】勤務の合間をぬって2年間、習得してきた韓国語会話が急病の韓国人観光客を救った。田宮正史さん(41)=奈良県柏原市在住、中和広域消防組合消防本部救急救助課救急係長=は、今年の夏の体験を11月20日、民団奈良県本部主催の韓国語弁論大会で発表し、「奨励賞」を贈られた。
民団奈良本部主催 弁論大会で発表
患者は日本語の通じない30代の女性。日系ブラジル人かと思って英語とスペイン語で話しかけたが、反応はない。ふと、「アパッ(痛い)」という聞き慣れた韓国語が聞こえてきた。
田宮さんがとっさに「ケンチャナヨ(大丈夫)」と話しかけると、患者が初めて反応し、固くつむっていた目が静かに開いた。
田宮さんは頭の中で知っている限りの韓国語をフル回転させた。「オディ、アパヨ(どこが痛いですか)」「アンシン、ハセヨ(安心してください)」。田宮さんは返ってくる言葉の1割も理解できなかったというものの、会話を続けることで患者は安心したようだった。
女性から「コマワヨ」という感謝の言葉を聞いた田宮さんは、「韓国語を勉強していてよかった。もっと勉強しよう」と奮い立ったという。
田宮さんが3年前、ソウル市内を散策中のこと。たまたま鍾路消防署の前を通りかかった。韓国の救急制度について知りたいと入ったところ、若い消防職員から流ちょうな日本語で応対を受け、ショックを受けた。
日本に戻ると、民団奈良県本部の韓国語教室に通うようになり週1回、奈良韓国教育院の車聖旭院長から韓国語を本格的に学ぶようになった。いまは地域在住の韓国人から個人レッスンも受けるほど韓国語にのめり込んでいる。
田宮さんは職場での救急出動の際、「チュルバル(出発)」と号令をかけるのが習いになっている。当然ながら部下たちからは「イエ(はい)」という返事がかえってくる。
弁論大会の審査員を務めた奈良韓国教育院の車院長は「韓国語の評価そのものは奨励賞でしたが、内容がすばらしかった」と話している。
(2004.12.8 民団新聞)