掲載日 : [2005-01-26] 照会数 : 4782
「道義上の問題残る」 植民地支配の清算(05.1.26)
[ 太平洋戦争犠牲者遺族会で被害補償を問う遺家族ら ]
法的な解釈はともかく
40年ぶりに公開された韓日条約文書
「補償基金」設立を提言…日本人有識者
韓国政府が40年ぶりに公開した韓日基本条約などの交渉過程関連文書を通じて、植民地統治と戦争被害に対する清算に消極的だった日本側の姿勢があらためて浮き彫りになった。一方、韓国側も日本側の経済協力を請求権放棄の代償として受け取りながら、個人への補償が不十分だったため、被害者からの不満は高まるばかり。日本人の有識者からは、「法的な解釈はともかく、道義的な問題は残る」との声が出ている。
韓国政府が17日公開した外交文書は、当時の大平正芳外相と金鍾泌韓国中央情報部長が62年11月に「無償3億、有償2億㌦」で決着させた「大平‐金メモ」に基づき、外務当局がその後行った交渉経過を明らかにしたもの。
日本人の有識者からは「ほんの一部の公開だが、ここまで来たのは成果」(立教大学の山田昭次名誉教授)、「大発見ではないが、新しい資料は出ている」(高崎宗司津田塾大学教授)と韓国政府の姿勢を評価する声が強い。
一方、韓国側の請求権主張に対してあくまで「韓国経済の開発、発展に寄与することを希望して」の協力にこだわった日本側に対してはかなり批判的だ。
戦後補償問題に詳しい高木健一弁護士は「日本は3億㌦の根拠を出させながら、その名目を補償とせず、経済協力を押しつけた。しかもその資金をどう使うかについてもいちいち注文した。結果的には韓国人の軍人・軍属ら犠牲者が両国政府から無視された」と指摘する。
高崎教授も同意見だ。「日本が韓国側に請求権を放棄させるのにいかに執拗だったのかがあらためてよく分かった。戦争被害者に何かしようという気はさらさらない。当時は植民地支配に対する反省どころか、そもそも悪いことをやったという自覚がなかったのだ。これはこれからも最大の問題になるだろう。法的な解釈はともかく道義的な問題は残っている」。
この道義的問題は韓国側にもあるという。高木弁護士は「被害者個人への補償を要求したからには、韓国側も当事者への補償義務を負ったといえる。確かに70年に補償法案をつくって当時の流れの中ではよくやったが、対象者を絞ったり、金額も少なかった」と指摘している。
今後の解決策として高木弁護士と高崎教授が共通して提起しているのは「補償基金」の必要性。高崎教授は「韓国政府からまず補償基金のようなものをつくったらいい。これに対して、日本政府が何もしないというわけにはいかないだろう。日本にとってもこれが戦後補償を果たすうえで最後のチャンスになるかもしれない」と話している。
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在日除外条項
韓国政府の頑張り
韓日請求権協定は在日韓国人に「影響を及ぼすものではない」(同2条2項a)として、在日を補償の対象から外している。これについて、高崎教授は「韓国側が思ったより頑張った。これは在日韓国人が頑張ったからそうしたのかもしれない」と話している。
(2005.1.26 民団新聞)