掲載日 : [2005-02-02] 照会数 : 9070
<国籍条項訴訟>最高裁で逆転敗訴したが…
[ 判決後、会見する鄭香均さん(左)と弁護団 ]
開放の流れ変えさせぬ 自治体 動揺せず 撤廃運動、むしろ拍車
最高裁判所大法廷(裁判長・町田顕長官)は1月26日、在日韓国人2世の保健師、鄭香均さん(54)の管理職選考受験を拒否した東京都の国籍要件を合憲とする判決を言い渡した。ただし、判決は単に都の裁量権を認めたにすぎず、外国人を管理職に任用するかどうかの判断は自治体に委ねている。地方分権の流れのなかで独自性を主張し、門戸を開放してきた自治体に動揺はない。国籍条項撤廃運動はむしろ勢いづくことになりそうだ。
判決は外国人が管理職に就任することについて「わが国の法体系の想定するところではない」として、憲法判断そのものを回避した。一体的な管理職の任用制度を構築して、人事の適正な運用を図ることも自治体の判断でできるとした都の言い分に押し切られた格好だ。ただし、自治体が独自の判断で外国人を管理職に任用することまで禁止したわけではない。
各自治体の判決を見る目は冷静だ。橋本大二郎高知県知事は「都に限った判断。他の自治体に影響するとは思われない」と述べている。 事実、全国最多212人の外国籍職員を抱え、係長・課長クラスも11人出ている大阪市では、判決内容を分析した結果として、「特段、影響はない」と話している。条件付きながら全国に先駆けて一般職の国籍要件を撤廃した川崎市でも「私たちの任用が否定されたわけではない」と、「川崎方式」に自信を示した。決裁権のない管理職であれば、課長級以上に登用していくとの従来の方針に変わりはない。
全国で初めて在日外国人の管理職を誕生させた兵庫県川西市の人事担当者は「地方分権の流れのなか、各自治体の判断と責任で採用してもいいのだと個人的には受け止めた」と話す。同市教委副主幹の孫敏男さん(49)も「管理職登用の国籍条項が自治体判断とされたのだから、住民の選択で首長が代われば登用の道も開ける」と、前向きに受け止めている。
大法廷の裁判官15人のうち、2人は反対意見で「直接、住民に強制する職種や統治の核心にある職種でないのなら外国籍の職員を管理職にしてもいい」とした。
金敬得弁護士は「在日外国人が押し切られても、裁判所は助けてくれない。土俵の上で在日外国人と行政とが押し相撲をしろということ」と話す。鄭さんの裁判闘争を支援してきた「定住外国人の公務員採用を実現する東京連絡会」(田中宏代表)では、今回の判決をステップに市民団体レベルで自治体の門戸開放の流れをさらに確かなものにしていこうと、全国各地の運動体に呼びかけての全国会議を近く東京で開く。
■□差別容認は不当 国際局長談話発表
民団中央本部の徐元喆国際局長は1月26日、最高裁判決について次のような談話(要旨)を発表した。
最高裁判所は国籍差別を容認する不当な判決で、鄭香均さんの切実な訴えを退けた。現実の実態と国際化の流れに逆行し、日本を愛し日本に定住する在日外国人子弟の期待と夢を踏みにじるもので、断じて容認できない。国籍条項の根拠としている「当然の法理」は法ではない。法によらない不当な国籍差別をはずさない東京都の責任は大きい。
また、法治主義の実質が問われていた裁判で、在日韓国朝鮮人の人権問題にきちんと対応してこなかった日本国の責任は重い。私たちはこれからも差別のない共生社会の実現に向け、不当な国籍差別撤廃運動を粘り強く続けていくものである。
(2005.2.2 民団新聞)