掲載日 : [2005-02-23] 照会数 : 12016
<社説>共生理念さらに高く
強まる民団への期待 組織強化で応えよう
民団はいま、「在日100年」、祖国光復60周年、韓日国交正常化40周年など、私たちの境遇を決定づけた歴史の節目と、新たな飛躍を期す創団60周年を来年に控えた時点にある。
そして今日23日に第58回定期中央委員会を開き、明日24日に組織強化を図る規約改正のための第48回臨時中央大会を開催する。民団の過去・現在を検証し、将来に向けて問題意識と課題を共有する場になるよう期待したい。
民団はこの間、在日同胞を取り巻く差別や不利益を一掃する努力を続け、さらに進んで、地方参政権の確立を機軸に、定住外国人と地域住民の共生を確かなものにする運動を展開してきた。これらは直接・間接に大きな成果をあげた。しかし私たちは、その成果の大きさがゆえに、自分たちの次元だけで運動を評価することが許されなくなっている。
私たちが掲げる共生理念は、多くの地方自治体の共鳴を呼び、日本という閉鎖的な国をしても無視できないまでに力を持った。ばかりか、増え続ける他の定住外国人にも共感を広げた。民団を中心とする同胞たちはいまや、それぞれの地域で多文化共生社会を実現する原動力として重きをなし、定住外国人に頼られる存在になった。私たちは自分たちが考える以上に、周囲に影響を及ぼしている。
先駆の自覚を
10年にわたって争われた鄭香均訴訟の最高裁判決は、多くの定住外国人にショックを与えたと伝えられる。日本の国際化は避けられず、それ相応のシステム構築が急がれると考える人々も唖然としたことであろう。
日本は韓国やアジア諸国とのFTA(自由貿易協定)交渉に力を入れている。協定が成立すればカネ、モノ、ヒトの移動は加速する。労働力はもちろん移民の受け入れも排除できない。しかし、100年の足跡を刻む在日同胞の地位さえ確定していると言い難い状況は、外国人の秩序だった移入の制度化ができるのか、まともなFTA時代を迎えることができるのか、懸念を日本に突きつけることになった。
少子高齢化社会の日本がこのままの状況で推移すれば、ますます保守化して柔軟性を失いかねないとの危惧から、「外国籍住民」のステイタスをどう確立するのか、その先駆者として在日同胞側からの問題提起が重要になるとする識者の声は少なくない。これはまた、FTAの次元までいかずとも、多様な国籍の外国人が集住し、共生が日々の差し迫った課題である地方自治体にとっても同様であろう。
私たちは何よりも、自らの生き方に忠実であろうとするところから、多文化共生理念を導き出し、現実の運動のなかでそれを鍛えてきた。それがいつしか、定住外国人の生活権拡充や日本のFTA体制構築にインパクトを持ち、さらには東北アジアの新時代創出にも貢献する可能性を指摘されるまでになった。
意識共有進む
鄭香均訴訟は逆転敗訴だったにもかかわらず、外国人に公務員就任・昇任への門戸を開放した先行自治体はむしろ、管理職への登用も各自治体の裁量に委ねたものと強く受けとめ、まったく動じる気配を見せていない。本紙に寄せられた首長らのコメントは、民団の信念が多くの自治体との共有理念となっていることをまざまざと見せつけた。
任意の大衆団体あるいは生活者団体で、ここまで実績を積み上げた例は希有であろう。しかし、最高裁判決は私たちに、それぞれの地域で国籍条項撤廃、地方参政権獲得のための保塁をいっそう積み上げるよう促している。私たちは多文化共生をより高く掲げ、その理念を着実に具現する組織力を強化するために、改めて全力を注ぐ決意を固めたいものである。
(2005.2.23 民団新聞)