掲載日 : [2005-03-30] 照会数 : 11288
重国籍12歳の決断…チョゴリで卒業式(05.3.30)
[ 校庭でクラスメートとお別れの握手 ]
津市の申瑠伽ちゃん「父のルーツ大事にしたい」
家族が後押し、学校が総合学習で環境整備
【三重】ピンクと紺の色鮮やかなセットンチョゴリが、卒業式の晴れの舞台でひときわ鮮やかに映えた。「父のルーツを大事にし、自分らしく生きたい」という申瑠伽ちゃん(12)なりの決意表明であった。シン・ルカと呼ばれ、壇上で卒業証書を受け取ると、クラスメートから大きな拍手が送られた。
卒業式は18日、三重県津市立一身田小学校で行われた。オリニが韓服で卒業式に臨んだのは、同校では瑠伽ちゃんが初めて。式典後、「日本人以外にルーツを持つ人に、自分が外国人だと言えて、自信を持ってほしかったから」と瑠伽ちゃんは自らに言い聞かせるかのように明かした。
父は在日3世の申勇治さん(37)。母は日本人ながら、二つの名前を名乗る違和感から夫の姓を名乗るようになった真由子さん(33)。瑠伽ちゃんは高槻の同胞子ども会に通ううち民族的な自覚を育んでいった。
瑠伽ちゃんは4年生まで通った津市内の別の小学校では「今村」の姓を名乗っていた。一身田小学校に転校した5年生の時、両親から「一家で本名の『申』を名乗って生きよう」と言われ、学校でも申を使うようになった。内心では「珍しい名前だし気に入っていた」という。
だが、周囲は韓国名を名乗る瑠伽ちゃんをすんなり受け入れてくれたわけではない。仲のよい友だちさえ家族から「もうその子とつきあうな」と言われて離れていった。教室を移動中にたまたまぶつかった男子児童からは「だから、在日は嫌いや。韓国に帰れ」とも言われた。瑠伽ちゃんは当時を振り返り、「お父さんが否定されているようで悲しかった」。
事態を重く受け止めた学校側は「総合的な学習の時間」を利用、児童が韓国の文化を学べる時間を作った。国際理解教育の一環として企画した韓国料理講習では母親の真由子さん自ら講師を引き受け、ピビンバを紹介した。児童に好評だったことでその後、学校給食にも採用された。
チャンゴ実習では韓国に帰れと言った当の男子児童の姿も見られた。瑠伽ちゃんは「韓国について少しでも知ろうとしてくれることがうれしかった」と話している。
卒業式を1カ月前に控えて当日の衣装について話し合ったときのこと。真由子さんはジーンズやスーツばかりか、チマ・チョゴリも選択肢としてあることをそれとなく教えた。すると、瑠伽ちゃんは自らチョゴリを着たいと意思表示した。両親は黙ってうなずいた。
一身田小学校の村井康則校長は「中学に進まれても韓国人を誇りに思う気持ちを大事にしていただきたい。学校としても人権学習や国際理解教育を通じて偏見をなくしていく取り組みを進めていきます」と述べた。
(2005.03.30 民団新聞)