掲載日 : [2005-04-13] 照会数 : 5666
女性進出〞男の牙城〟へ先駆者次々(05.04.13)
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女性進出〞男の牙城〟へ先駆者次々(05.04.13)
韓国の女性発展基本法10年
1995年12月、韓国で男女平等の促進や女性政策の基本計画を定めた「女性発展基本法」が制定されてから、今年で10年目を迎える。この制定以降、女性の地位向上のための政策や制度が数々打ち出され、男女共同参画社会の土台を整えてきた。これまで「女は家庭を守るのが当たり前」という考えの根強い韓国で女性たちは今、政治や行政分野をはじめ、医療現場などの多分野で活躍の場を着々と広げている。
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政界・官界・軍・医療現場…戸主制廃止で拍車
韓国で女性の地位向上に向けた具体的施策に弾みをつけたのは、1995年に北京で開催された「第4回世界女性会議」だろう。この会議で採択された「北京行動綱領」には、女性の人権や社会進出などに関する課題が盛り込まれた。
韓国はこの「行動綱領」の目標達成に向け、95年に「女性発展基本法」を制定。次いで、家庭暴力防止と被害者保護等に関する法律、男女雇用平等法、女性企業支援法などの法律が短期間で制定され、さらに01年1月に韓国政府に女性部が新設された。
女性公務員の採用目標制をつくったのをはじめ、00年に政党法を改正してクォーター制を導入した。クォーター制は差別をなくすために、暫定的にとられた制度で、これによって国会や地方議会の比例代表選挙候補者名簿に、各政党は候補者の3割を女性に割り当てることになり、00年の選挙では、女性議員数を9人(3・9%)から16人(5・9%)に増やした。
もちろん女性パワーは、男性中心だった多様な場所でも発揮されている。
朴仁淑さんは国内で初めて、女性として蔚山大医学部の部長に就任、イ・チャンスクさんが、国税庁初の本庁課長に昇進したのをはじめ、今年は36人の女性検事が新規任用された。さらに99年に女性の士官学校入学を許された海軍では、02年に女性初の将軍が誕生するなど、これまで「男の牙城」とされてきた各士官学校や警察でも女性たちが、男性顔負けの活躍をしている。
さらに男女平等の障害だとして、女性・市民団体が70年代から訴えてきた「戸主制」の廃止などを盛り込んだ民法改正が3月2日に韓国国会本会議で成立したことで、ますます女性の権利は拡大していくだろう。
この10年間、韓国では女性の能力を引き上げるためのさまざまな取り組みが実施されてきたが、手放しで喜んでいられる状況とは必ずしも言えないようだ。
99年の国連開発計画(UNDP)年次報告書「ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上」の統計で韓国は、64カ国中61位と、女性の社会進出が低いとされた。
また今年3月に米クレジットカード大手マスターカード・インターナショナルが発表したアジア・太平洋の13カ国・地域を対象とした「女性の社会進出度調査」で韓国は最下位となった。
この調査は「管理職の割合」「平均収入」など4項目を分析し指数化したもので、これらの結果から韓国はいまだに男性優位社会であることがわかる。
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社会全般への拡大がカギ
一方では、女性の社会進出で生じる弊害を挙げる声も少なくない。
ある男性は「女性の社会進出のための政策に傾いた結果、離婚率の増加と出産率の低下という事態を招いた」と話す。「経済的能力を備えた高学歴の女性が増加し、子どもよりも自分の人生は自分のものという認識が広まっている」という声もある。
だが、これらの声にもかかわらず、多くの女性たちは結婚よりも社会での成功を望んでいるようだ。
3月にケーブル・衛星テレビの女性専門チャンネル「オンスタイン」が行った、20〜30代の未婚女性3217人を対象にしたアンケートで、51・6%が結婚や育児より社会的成功を望んでおり、40%が仕事で充実を求めたいという理由から、結婚しないと答えた。
だが社会全体を見ると男女間の賃金格差、昇進、雇用の安定性やセクシャルハラスメントなどの差別待遇問題も依然残る。このためこれまでに打ち出された法の制定や制度の適用は、残念ながら一部の階層にとどまり、底辺全体にまでは及んでいないと考えられる。
ともあれ女性の地位が上がり、各界で成果を上げているのは事実だ。
今後、韓国で女性たちが持っている能力を生かす場を拡大していくために、社会全体の一層の意識改革や教育が課題となるだろう。
(2005.04.13 民団新聞)