掲載日 : [2005-06-08] 照会数 : 9474
歴史認識共有へ一歩…共通副教材が完成
[ 記者会見する日本側委員(手前は共通歴史副教材) ]![](../old/upload/42a6bb356d30c.jpg)
韓・中・日近現代史 共通副教材が完成
3カ国で出版 各国学者ら3年がかり
韓・中・日3カ国の歴史学者や中・高校教員、市民団体が共同編集した共通歴史副教材『未来を開く歴史=東アジア3国の近現代史』が、このほど完成した。韓・日、韓・中という2カ国による歴史対話や歴史副教材づくりの試みはこれまでにも行われてきたが、3国での共通歴史副教材の発刊はこれが初めて。5月27日、日本側委員が都内で記者会見し発表した。
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一国史観乗り超えて
出版事情から3国それぞれ版型や表紙は異なるが内容は同一。東アジアの近現代史を通史ではなく、テーマ別に扱う。各版とも1500から1800㌻。見開き2㌻が1項目形式で読みやすい。
問題を投げかけながら読者に問いかけたり、考えさせることに力点を置き、無理矢理決まった結論や評価を押しつけてはいない。これは個々の歴史的事件の見方やとらえ方で如実となった認識の違いを克服することがいかに困難だったかを表している。
侵略した側と侵略された側、一つの事象をどう見るかは自ずと異なっていた。韓国併合の記述では韓国側が「強占」と主張。韓・中2国間では前近代の「朝貢」をめぐって、ナショナリズムの衝突が見られたという。
複雑にからみ、もつれあった歴史認識の溝を埋めていくためには3年がかり50回以上に上る会議を要した。会議は朝から始まり、深夜に及ぶこともしばしばだった。
日本側委員会の委員長で、ほかの2カ国との間で意見の調整役も果たした早稲田大学教授の大日向純夫さんは、「歴史事実の検証と共有に重きを置き、一国史観を乗り超えようと地道な説得を重ねてきた」と話す。同じく委員の一人、笠原十九司さん(都留文科大学文学部教授)は「共同作業を通じて韓国、中国とも偏狭なナショナリズムの欠陥に気づいてくれたのが希望だった」と振り返る。
少数者、女性、民衆、人権に配慮した。「問われる日本の過去の清算」(第4章2節)で在日韓国人が日本に住むようになった背景を解説。コラムでは解放直後から今日に至る「在日朝鮮人の権利獲得のたたかい」を取りあげた。このほか「関東大震災と朝鮮人・中国人の虐殺」も紹介している。
共同編集に向けた取り組みは02年3月、中国で開かれた「第1回歴史認識と東アジアの平和南京フォーラム」で提起された。当時は「つくる会」の歴史教科書が登場したばかり。「日本の過去の侵略戦争や植民地支配を正当化し、自国中心・排外主義の教科書」と同教科書を批判するからには、それに代わる教科書を作る必要があった。今回完成した副読本はいわば「つくる会」教科書へのアンチテーゼといえる。
読者は中学生以上を想定している。1600円(税別)。日本版は高文研で取り扱い中。℡03・3295・3415、韓国語版はハンギョレ新聞社刊。
(2005.06.08 民団新聞)