掲載日 : [2005-07-06] 照会数 : 7468
「つくる会教科書」阻止取り組み本格化
[ 共同アピールを読む「守る会」事務局長(手前) ]
[ 東京地裁で記者会見する「杉並親の会」と関係者 ]
長野県…民団・総連が連携し市民団体と共同アピール
「杉並親の会」…採択差し止めへ区を提訴
【長野】長野で民団と総連の両本部、および市民の3団体が松本市内の教科書展示会場で「新しい歴史教科書をつくる会」が中心となって編纂した中学歴史教科書(扶桑社発行)の不採択を呼びかける共同アピールを発表した。一方、東京の杉並区では保護者の会が採択差し止めを求める民事訴訟を起こした。つくる会教科書の採択阻止をめぐる動きはいよいよ本格化してきた。
共同アピールは、「つくる会」教科書の記述内容が、95年8月に当時の村山首相が「談話」で明らかにした歴史認識に明白に違反するばかりか、日本政府が82年に検定基準として設けた「近隣諸国条項」を無視した国際的信義にもとる教科書であると指摘し、不採択を呼びかけている。
アピールに加わったのは民団長野県本部(呉公太団長)と総連長野県本部(李光相委員長)、および松代大本営朝鮮人犠牲者追悼碑を守る会(塩入隆会長)の3団体。各団体代表12人はこの日、松本合同庁舎ロビーに展示された中学歴史教科書見本本を手にとり、「つくる会」教科書との記述の違いを近現代史に絞って比較検討した。
「つくる会教科書」の記述を子細に検討した民団長野県本部の朴宰洙議長は「4年前より表現は軟らかくなったとはいえ、視点は一緒。事実を事実として書いていないことが問題だ」と指摘した。同じく総連側の李委員長も「未来志向型の関係を築く正確な記述が求められる」と批判した。
席上、呉団長は「私たちは豊臣秀吉の朝鮮侵略を『朝鮮征伐』、あるいは『朝鮮出兵』と教えられてきた。あのときの悔しい思いを子どもたちに味合わせたくない。私たちは日本人と在日韓国人の子どもたちが両国の望ましい歴史をともに学べる公平性のある教科書が採択されることを望む」と民団長野本部としての見解を明らかにした。
長野県では今月から来月にかけて県内15の採択地区で来年度の中学校教科書が選ばれる。
「『つくる会』の教科書採択に反対する杉並親の会」は、東京・杉並区(山田宏区長)が扶桑社版「つくる会」教科書を採択しないよう求める訴状を1日、東京地裁民事部に提出した。訴状によれば、杉並区では教育行政が区長主導で進められ、教科書採択にあたっても教育委員会がその追認機関となっていると指摘。これは教育の自主性をうたい、教育行政や執権政党などの不当な支配を禁じた教育基本法第10条に対する明白な違反だ、などと訴えている。
杉並区は「全国1割、東京5割」の採択を目指す「つくる会」が全国的にも「突破口」と位置づける戦略地域。山田区長自身、かつての戦争と侵略の歴史を賛美し「つくる会」教科書を支持する発言を繰り返してきただけに、扶桑社版教科書が採択される可能性が全国に増して高い地域と指摘されている。
地裁記者クラブでの記者会見に臨んだ「杉並親の会」の関係者は「杉並区で『つくる会』教科書が採択されれば、国民感情の対立を増幅し、韓国・中国との外交関係を修復不可能なまでに悪化させ、取り返しのつかない事態に至る危険性が高い」と述べた。今後は原告10人をさらに増やし、2次訴訟に持ち込みたい考えだ。
万一、杉並区が「つくる会」教科書を採択したときは、現行の差し止め訴訟から採択の取り消しと執行停止を求めた本格的な訴訟に切り替えていく方針。
■□
民団神奈川…36市町村すべての教委に要望
【神奈川】民団神奈川県本部(殷鍾七団長)は傘下の民団支部と連携しながら県内36の教育委員会を訪ね、要望書を提出した。6日には唯一残る鎌倉市教育委員会を訪問する。
これまで7つの教育委員会で教育長と直接面談した。教育長と面談ができなかった教育委員会でも教科書採択に関わる事務的な責任者と会い、扶桑社版教科書の問題点を指摘して理解を求めてきた。
同本部は5月17日の決起集会を起点として要望活動を展開している。
(2005.07.06 民団新聞)