掲載日 : [2005-08-17] 照会数 : 8155
人気高まる韓国の絵本…近刊10点、相次ぎ増刷
[ 「韓国の作品の絵の力にひかれて毎月1冊ずつ刊行した」と話す堀さやかさん ]![](../old/upload/430427f231ba9.jpg)
多様な内容①伝統文化②昔話や民話③今の暮らし
国を超え子らの糧…日本の学校図書推薦に
出版社のアートン(東京・渋谷区)が昨年3月から12月まで、月1冊のペースで刊行した韓国絵本シリーズ「韓国の絵本10選」が幅広い年代からの支持を得て、現在も増刷を重ねている。作品は昔話や民話、韓国固有の民族性や伝統文化を伝えるものなどで、多彩な内容の作品を取り揃えた。10冊はいずれも日本の全国学校図書館評議会の推薦図書に指定された。日本ばかりか、世界的にも注目されている逸品だ。
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「韓国の絵本10選」では、前半5冊は韓国の民話や昔話を中心に、後半5冊は韓国の文化や創作絵本などを幅広く集めた。第1弾刊行の「うしとトッケビ」は、韓国で愛されているトッケビ(おばけ)をユーモラスに描いたもので、増刷を重ね1万部を超える人気第1位の作品。
また「あずきがゆばあさんとトラ」は2004年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展ラガッツイ賞受賞作で、「あかいきしゃ 」はハングル版ABCの本として、韓国ではロングセラーとして親しまれている本だ。
「毎月1冊刊行することに意義があり、反響も少しずつ出てきたと思う」と話すのは当時、編集に携わった堀さやかさん(31)だ。
「アジアを視野に入れた本作り」をコンセプトに、韓国の面白い書籍を探していたとき、当時、誠信女子大学校などの専任講師として教壇に立ちながら、絵本作家や画家、編集者らと交流を深めていた大竹聖美さん(東京純心女子大学現代文化学部こども文化学科専任講師)から作品を紹介されたという。
堀さんは「韓国のいろいろな出版物を見て、今韓国では絵本が面白いということになった。絵の力に惹かれた」と話す。「韓国の絵本10選」のコーディネート・翻訳を大竹さんが手がけ、1年間の準備期間を経て刊行に至った。
大竹さんは現代韓国絵本には、大きく分けて3つの流れがあるという。一つは、韓国固有の文字やハングルなど、文化を伝える絵本、二つ目は昔話、神話、説話をもとにしたもの、そして三つ目は新しい感覚で、現代の都市生活や、そこに生きる人々の価値観が描かれている作風のものだ。
バラエティーに富んだ作品は、日本の読者にも共感を与えた。アートンに送られてきた読者カードには、「孫にプレゼントしたいから購入した」というお年寄りや、「娘がへチ、へチと言って絵本を取り出してくる」と綴った母親、また、「韓国にはこんな素敵な絵本があった」と、学校で読み聞かせをしているというものまであった。
大竹さんは「隣の国の絵本が、日本の子どもたちの良い精神の糧となれば」と長年、願ってきた。その思いは確実に芽吹いているようだ。そして堀さんは韓国絵本の魅力について、「自分たちの文化はなにかというものを勉強し直して、絵本に投影している真摯な姿勢」だと話したうえで、「韓国の絵本の力をいろいろな人に見てもらえたということで、本当に携わって良かった」という。
なお10冊の絵本は、アートンが「本の読める韓国伝統茶の店」として先月、東京・西麻布にオープンした「韓国茶菜房・三丁目カフェスーペ」で手にすることができる。
同店は白を基調にした清潔感あふれる空間で、手作りの伝統茶や素材の味を生かした韓国料理を楽しむこともできる。そして堀さんが「韓国絵本は売れています」と話すように、オープンからこれまでに、絵本を求める人は後を絶たない。
「韓国茶菜房・三丁目カフェスーペ」は、(℡03・3408・5607)
(2005.08.17 民団新聞)