掲載日 : [2005-08-31] 照会数 : 8946
戦後補償…在日3世が担う
[ 遺族に「市民戦後補償金」を手渡す鄭順一さん(左) ]
募金136万円を伝達…「PALAMプロジェクト」
はざまの戦傷元軍属遺族へ
【済州】戦後補償のはざまに置かれ、日本国による弔慰金支給対象から除外された同胞戦傷元軍属の鄭商根さん(故人)を支援する同胞市民団体「PALAMプロジェクト」(大阪府松原市)は23日、済州道在住の鄭さんの遺族を訪ね、4年余りかけて集めてきた「市民戦後補償金」の一部36万円を手渡した。
遺族は北済州郡旧左邑に住む。プロジェクトチームを代表してリーダーの鄭順一さん(38)が遺族で妻の金順児さん(85)と長男ソプ鎭さん(64)に基金を手渡した。遺族へ手渡された基金は02年当時の100万円と合わせ計136万円になった。
鄭さんは「日本政府に代わって市民から預かってきた戦後補償金です。戦後60年たってなおこの問題に及び腰な日本政府をしり目に、多くの市民は商根さんや順児さん、ソプ鎮さんたちの思いを理解しようと努力していることを分かってください」と述べた。
ソプ鎭さんは「植民地によって犠牲となった人々への償いは日本政府が率先して行うべきものなのに、みなさんのように日本に暮らす若い人たちが立ち上がってくれているのが心強い」と語った。
済州道を訪れたのは「PALAMプロジェクト」が「戦後60周年」を機会に企画したスタディツアー「在日1世のルーツを訪ねる旅=鄭商根さんの場合」に応募した大阪在住の同胞と日本人の若者12人。23日は順児さんから戦争体験を聞くなどして交流。翌日は鎭さん夫妻の案内で徴兵窓口となった旧植民地時代の面事務所を見学し、鄭さんの墓参りも行った。
「PALAMプロジェクト」は91年、障害年金年金の支給を求めて大阪地裁に提訴した鄭さんの戦後補償裁判を「支える会」が前身。スタッフは30代の在日3世5人と日本人青年1人の計6人。
鄭さんが95年の一審判決を待たず他界した後も遺族による控訴審を支えてきた。01年6月に「PALAM基金」を開設、06年6月までの5年間で300万円を目標に募金を呼びかけている。
スタッフの1人、勝田武司さん(29)は「今回のふれあいは国境を超えた交流の重みをあらためて痛感するいい機会になった」と述べた。また、在日3世の金純嬉さんは「金順児ハルモニの表情や暮らしぶりなどから自分のルーツを垣間見た感じがした」と話していた。
■□
鄭商根さんとは
42年、日本軍軍属として徴用され、マーシャル諸島、ウォッゼ島へ。連合軍の攻撃を受け右腕切断、聴力障害も。91年1月、「戦傷病者遺族等援護法」に基づく障害年金からの排除を違憲と大阪地裁に提訴するも棄却判決。01年4月、援護法から除外された在日の戦傷病者に400万円、遺族260万円の弔慰金を支払う特別立法が公布されたが、遺族が韓国在住の鄭さんだけは対象から除外された。
(2005.08.31 民団新聞)