掲載日 : [2005-09-07] 照会数 : 8582
「つくる会」歴史教科書、採択率0.4%
[ 記者会見する15団体の代表(日本教育会館で) ]
政治的圧力を粉砕…市民団体「学校採択に戻せ!」
「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編さんされた扶桑社版歴史教科書が採択率0・4%前後(推定)にとどまることが明らかになり、「子どもと教科書全国ネット21」をはじめとする15団体は1日、事実上の勝利宣言を行った。また、この日明らかにした「共同声明」で、この間、民団と青年会の果たしてきた役割を高く評価した。
◆民団などの役割評価…共同声明発表
1日現在、全国583の市区町村採択地区のうち、「つくる会」の『歴史』教科書を採択したのは栃木県大田原市と東京都杉並区だけ。都道府県立学校では東京都と滋賀県、愛媛県の36校。都道府県立学校・公立中学校合わせても3950冊にとどまった。都道府県教委が目立つのは、住民の意思の届かないところで採択に及んだためと見られる。
それでも、ここに私立中学校を加えた『歴史』の総使用冊数は5000冊余り(0・4%)。旧版が1500冊余りだったため約3倍の伸びでしかない。一方、『公民』は2300冊(0・2%)。4年前の約700部に対してやはり3倍増にとどまった。
私立学校では今後とも採択の可能性が残されているものの『歴史』については最大でも0・5%を超えることはないと見られている。
声明は、「今回は在日コリアンや在日中国人の方たちとの共同した活動が全国で展開されました」「とりわけ在日韓国民団とその青年会の人々が、自らの問題として大きな力を発揮しました」と指摘、全国的な草の根市民運動の広がりを高く評価した。
会見で「教科書ネット21」の俵義文事務局長は、「近隣諸国にも安心してもらえたのでは」と胸を張った。一方、扶桑社版以外の教科書から日本の侵略戦争や加害に関する記述を後退させるなど、教科書会社が自粛に追い込まれた。この直接の原因をつくった一握りの教育委員による採択制度を「改悪」とし、現場教員の意見に配慮した採択制度に戻すよう文科省に呼びかけた。日本政府は97年に「近い将来、学校ごとの採択にする」としたが、いまだに実現していないのが現状だ。
この間、「つくる会」では採択率10%以上を目標に、政治家を使ってまで文科省に検定・採択制度の「改悪」を迫ってきた。地方議会レベルでも議員を動かして教育委員会に露骨な圧力をかけ、はなはだしくは首長と教育長を支持者に取り込んできた。それでもこうした惨めな結果に終わった。「一部で例外はあったものの政治的な圧力では決まらない」(俵事務局長)ことがはっきりしたといえそうだ。
(2005.09.07 民団新聞)