掲載日 : [2005-09-07] 照会数 : 11919
新宿「多文化共生プラザ」オープン
[ 多文化共生プラザのテープを切る(左から)木島正芳東京入管局長、中山弘子新宿区長、小畑通夫新宿区議会議長
]
[ 多文化共生プラザはこのビルの11階に(新宿区歌舞伎町) ]
■□
ふれあい励まし相互理解
生活相談や日本語学習…多様さ認め合う基地
東京・新宿区歌舞伎町2−44−1、都立大久保病院に隣接する複合ビル「ハイジア」の11階に、新宿区の施設「しんじゅく多文化共生プラザ」が開設された。新宿区は外国人住民の割合が東京都で一番高く、外国人と日本人との相互理解を求めるための多目的行政スペースとして活用されるものだ。
1日午後からオープニング・セレモニーが開催され、中山弘子新宿区長や東京入国管理局長の木島正芳氏、小畑通夫新宿区議会議長がテープ・カットを行い祝辞を述べた。この施設の今後の活用・運営については、全国の地方自治体から大いに注目されている。
新宿は外国人住民比率が日本一高い大久保地区を抱え、区人口約30万人の約一割、9万6千人余(本年6月現在)が外国人住民だ。中山区長は、外国人区民と日本人区民との共生と、「外国人犯罪」多発地区とされていた歌舞伎町の浄化を区長就任以来の最大の政策課題としていた。その双方を解決するための行政の窓口として、立ち上げたのが「多文化共生プラザ」だ。
施設は、複合ビル「ハイジア」11階フロアの一角、約250平方㍍を占有している。内部には多目的スペース、交流スペース、資料・情報コーナー、コミュニケーションの道具として言語は欠かせないとの観点から、外国人のための日本語学習コーナー、外国人の支援に直接つながる生活相談コーナーなどが設けられている。
セレモニーで中山区長は、「区長に就任以来、共生の問題に真正面から取り組みたいと考えてきた。そのための施設が完成し、目標へ向けてようやくスタートラインにつくことができた。ここから、新宿区に外国人が多数住んでいるということを、区のプラスイメージとして全国や世界に発信していきたい。そのためには、地元の日本人住民と外国人住民が顔と顔が見える環境を作ることが大切だ」と強調した。
この施設は、大久保地区や歌舞伎町などの商店会、振興会、韓国人団体、ボランティア団体などの地元の人々が支えている。中山区長は、「ここを、住民相互の多様性を認め合う社会を作るためのステーションとしたい」ともつけ加えた。
施設内には法務省入国管理局の外国人センターも併設され、外国人の入国・在留に関する各種の案内をすることになっている(手続きは行わない)。
区長に続いてあいさつに立った木島東京入国管理局長は、「歌舞伎町は外国人犯罪の温床地域として、治安悪化のシンボルのように見られていたが、入管としては不法滞在の外国人を取り締まる一方で、新宿の施設と歩調を合わせて、外国人が安心して暮らせる街づくりを目指している。外国人との共生は、今後の日本にとって重要課題の一つだ。多文化共生と都市再生の拠点として、この施設が全国のモデルケースとなることを期待している」と祝辞を述べた。
セレモニーに続いて、野山広国立国語研究所主任研究員が「多文化共生の時代に応じた日本語教育のあり方」について講演した。
この中で野山氏は「多文化共生社会という言葉は、安全で快適な共生社会を築くための規則や体制を外国人住民とともに築き上げていこうという《覚悟》が行政や住民の側にできたとき、暮らしの中に真に生きはじめることになる」として、「新宿区ではその覚悟ができたのだろう」と区側の積極姿勢を評価し、「この動きは全国に普及する歴史的な一歩になるはず」と結んだ。
施設は複合ビル上層階の奥まった場所にあり、地元の地理に詳しくない外国人にとってはあまり使い勝手がいいとは言えない。看板も小さくPRもまだ不十分で、今のところ行政側の一方通行の感は否めないにせよ、全国の自治体に先駆けて「多文化共生社会」をつくろうと意気込む熱意は強くにじみ出ている。「箱もの」をどう使いこなしていくかは今後の課題であり、新宿区の行政手腕に大いに期待したい。
(2005.09.07 民団新聞)