在日めぐり逢いの場
適齢期に差しかかる息子や娘を持つ親にとって、最大の関心事は結婚問題だろう。同胞同士の結婚を望んでも、日常生活で知り合う機会はほとんどなく、焦りと不安を抱え込みながら過ごす人たちは少なくない。このような状況を背景に、「より多くの出会いの場を提供したい」と定期的に開催しているのが、民団など同胞団体によるブライダルパーティーだ。主催者たちは、多くの要望に一つでも応えていきたいと奮闘している。
「何とか同胞同士で」
年齢の上限も引き上げて
「離婚してもいいから1度は結婚してほしい」。わが子の行く末を心配するあまりに「友人の口から出た言葉」だと話す68歳のオモニ(東京・板橋区)も人ごとではない。
やっとの思いで同胞男性の元に39歳で嫁いだ長女。今度は二女(42)と三女(39)の結婚問題で頭を痛めている。2人とも仕事で忙しい毎日を送る。同胞との結婚を希望しているため、これまで民間で主催するブライダルパーティーなどにも参加したが、男性参加者の年齢が若くて対象外。以来、足が遠のいている。
「参加したからといって一度では決まらない。お互い分かりあえるまでに時間はかかるし、同胞との結婚は難しい」とため息をつく。
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広島で
「青い鳥は自分で探しにいかないと家まで来てくれない。幸せは自分の足で探さないとだめ」。広島韓国青年商工会が主催するブライダルパーティー事務局長の崔信子さんは熱を込めて話す。12年前の第1回開催以来、毎年11月に実施している。約250組の男女が参加。北海道、長崎などからも足を運んでくる。
「結婚問題で悩んでいる人は多い。日本人と恋愛していても国籍の問題や食文化の違いなどが、のちのちの障害になることもある。ここでは堂々と胸をはって韓国・朝鮮籍、帰化同胞の方たちが参加している」
これまで参加対象者年齢の上限は男性35歳、女性30歳までだった。昨年のカップリングパーティーで、年齢制限を撤廃。男女ともに上限を40歳にすることを決めた。
同会では、初回からサポート制度を導入。参加者4人に1人の会員がサポーターとしてつき、細やかなケアをする。崔さんは「親は必死です。でも見合いの釣書、写真は資料にしかすぎず、動く姿、食べる仕草など自分で見て、話してみないとわからない」と話す。
問い合わせは広島韓国青年商工会(℡082・246・8570)、民団広島県本部(℡082・264・2345)。
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宮城で
昨年10月に初めてブライダルパーティーを開いた民団宮城県本部。30代半ばの男女各10人が東北、関東、関西地域から集まった。友人になれる同胞との出会いを求めて参加した人もいる。
姜恵美子同本部事務局長は「青年会年齢対象外の未婚者は、民団にも入りずらいし、よほどの誘いがないと難しいという話を聞く。ブライダルパーティーを利用することの利点の一つに在日同士の交流促進があげられる」。また「在日同士の結婚を希望される方も根強い。今後、気楽に参加できるネーミングや、参加者がコミュニケーションを取れる内容を検討している」。次回は来年度までに開催できればと張り切っている。
問い合わせは民団宮城県本部(℡022・263・6961)。
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大阪で
民団や婦人会など各組織が実施していたブライダル企画を一本化して運営するために、02年に発足した大阪コリアブライダルセンター。現在、男性会員250人、女性は280人を数える。パーティーは年に4回開く。 ブライダルマネージャーの劉瑩姫さんは「親の思いが入るから本人はしんどくなる。私たちは絶対にせかさない。1年かかっても自分たちが納得するまで待つ」と話す。
一般的に男性は女性の出産年齢を考慮して、30歳くらいまでの相手を希望する傾向がある。だがパーティーでは、年齢に関係なく、見た目の印象で年上の女性、年下の男性を選ぶケースも少なくない。
知り合ってから2年間、現在も交際しているという31歳の男性と35歳の女性カップル。会の終了後に話したのがきっかけとなり付き合うことに。
男性の両親は女性が年上だということで反対している。劉さんは親身になってアドバイスもする。2人に対しては親の立場、相手の立場などについて話してきた。「私は誰に対しても親の気持ちで接する。決して遠回しには言わない」
同センターでは後日、生年月日などの簡略情報を閲覧できる。「当事者たちは藁(わら)にもすがる思いで参加する。縁はどこにあるか分からないので、全国どこでも行ってみて、と話す。困っている方たちをなんとかつなげてあげたい」
次回パーティーは2月16日開催。問い合わせは民団大阪府本部(℡06・6371・7331)。
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多様化する結婚観
年下の男性にも抵抗なく
福岡で
女性の社会進出にともない結婚観は変化している。今、晩婚化の時代といわれているが、女性側から年下の男性をリクエストするケースも出てきている。
「最初、儒教の精神はどこにいったと思った」と話すのは、民団福岡県本部の宋一柱副団長だ。同胞同士の結婚が減少していることに危機感を持ち、92年からブライダルパーティーを開催。初回は100人以上の男女が会場を埋め、主催者側を驚かせた。2年前からより多くの機会がほしいという要望に応え、年2回開催している。
これまで女性は同世代や年上を希望したものだが近年、年下でも抵抗がなくなってきている。「40歳を超えていた男性でも、子どもがほしいと30歳半ばまでの女性を希望する」。さまざまなリスクを考えた場合、男性が相手を選ぶ基準は絞られてくる。
宋副団長は「先輩として情報をあげたいし、自分の周りには日本人しかいなかった、とならないためにも、いろいろな同胞と会える機会をつくってあげたい」と語る。
次回は6月を予定。問い合わせは民団福岡県本部(℡092・431・7231)。
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愛知で
昨年11月、対象者の年齢を引き上げ、男性40歳以上、女性35歳からとし、離婚経験者も含めたブライダルパーティーを開いた民団愛知ブライダルセンター。45歳以上や離婚経験者からの問い合わせに応えたもの。会員は男性82人、女性57人。
「民団でやる以上、韓半島にルーツを持つ人」を対象にしていると話すのは丁光栄事業部長だ。韓国・朝鮮籍以外に帰化同胞からも同胞との結婚を望む声は多い。同センターでは中北地区をメインに参加者を募る。パーティー後、「もう一度話がしたい」という参加者のために、アフターケアの体制も取られている。 丁事業部長は「民間でもブライダルパーティーをやっているが、どういう業者か明確でないこともある。その点、民団は確固たる組織だから同胞の安心をかう」と話す。 今年は5月を検討中。 問い合わせは同センター(℡052・452・7002)、Eメール
bridal@mindan-aichi.org
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尼崎で
01年から毎年11月にブライダルパーティーを開催している尼崎韓国商工会議所。父母たちの声に後押しされた。参加者の平均年齢は23〜30代後半。男女100人が関東、岡山、京都、滋賀、福井などから集まる。
多彩なイベントも用意し、各テーブルにスタッフがつくサポートも人気だ。「以前、参加した韓国人留学生が同胞女性と結婚した例もある」と高勇植事務局長は話す。
高事務局長は「ブライダルパーティーの開催は意義がある」ときっぱり。今年は11月を予定している。
問い合わせは尼崎韓国商工会議所(℡06・6482・2491)。
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青年会は独自の集い
民団とともに頑張っているのが青年会だ。3年前から「ウィンターパーティー」と銘打ち、出会いの場を提供しているのが青年会神奈川本部(柳栄鉉会長)。10〜30代後半と幅広い年齢層で毎回、80人近くの同胞男女が集う。なかでも30代の参加者は多いそうだ。
「自然さ」を大切に毎回和やかな雰囲気ですすむ。親から勧められて参加する同胞も多い。柳会長は「同胞同士が出会える場を大事にしてほしい」と話す。
今年は2月10日にパーティー開催。詳細は要確認。締め切りは2月3日。問い合わせは青年会神奈川県本部(℡045・316・0248)。
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青年会京都本部も03年から毎年1回、開催してきた。きっかけは「同胞同士の出会いの場がないという話を聞いた」からだと朴善貴会長はいう。参加者のメインは30代前後だが、20代半ばから40代と幅広い。
父母の反応は良く、定期的に連絡が入るという。それだけ「子どものことを心配してる」と朴会長。京都を中心に大阪、滋賀、岐阜などから参加。今後も「広く参加してもらうために広報に力を入れたい」と抱負を語る。
今年は4月を予定。問い合わせは青年会京都府本部(℡075・721・8399)。
(2008.1.30 民団新聞)