掲載日 : [2008-05-14] 照会数 : 5572
イルボンで出会いのエッセイ<11> 金益見
大切なものを大切にすれば…
妹が韓国に留学した。私は妹がとても好きなので会えない日々は少し寂しい。しかし、電話で聞く妹の声は思ったより元気そうで安心した。
ホームステイして1カ月、妹はそこで本当の家族みたいに大切されていると言っていた。
妹が留学する時、私と母は韓国まで付いて行った。私には最初、留学するのに、わざわざ現地まで送る意味がわからなかった。「きちんとあいさつしなくちゃいけないから」と母は言っていたが、あいさつは昨年、下見に行った時にもしているので、もう2回めだった。
母は、ホームステイ先のご両親に、妹が実はすごく寂しがりだということや、とても繊細であるということを伝え、「よろしくお願いします」と丁寧に頭を下げた。
母が話している時、妹が〞家宝〟のように見えて、私はその時はじめて母と私が韓国まで行った意味がわかった。
誰かに大切にしてもらうには、まずは自分が大切にすることから始まる。そして大切にしているということをちゃんと伝えれば、「大切なものを大切にしなければ」という気持ちになって返ってくる。母はいろいろなことを考えて、韓国まで付いて行ったのだなと思った。
日本に帰る前の日の夜、明洞で母と妹と3人で韓国料理を食べた。
それまでは旅行気分だったのに、明日から離れ離れになるという実感が急に湧いてきて、私は泣いた。するとそんな私を見て妹も泣いてしまった。
妹が寂しがるといけないから、泣いたりしてはダメよと言われていたのに、姉である私が最初に泣いてしまい、「しまった!」と思って母を見ると、母も泣いていた。
夜の繁華街で親子3人、料理を囲んで泣いている…。とっても変な光景だ。
すると母は、店員さんを呼び出して「私たちは、料理が辛くてびっくりして泣いているから気にしないでね」と言った。妹にも「これが辛くて泣いているのよ」と言った。
私はその光景そのものが幸せすぎて、ずっと泣いていた。店員さんもよほど辛さに弱い娘だと思ったことだろう。
馬鹿な姉と、可愛い妹、そして娘以上に涙もろい母と3人で食べた韓国料理は全然辛くなかったけど、妹は嬉しそうにうなずいていた。
(2008.5.14 民団新聞)