掲載日 : [2008-06-19] 照会数 : 11219
大阪「街かどデイハウス」補助金、大幅削減
[ 「街かどデイハウス」お年寄りの生きがいの場であり、「日韓交流の場」になっている(写真は八尾支部) ]
大阪「街かどデイハウス」補助金、大幅削減
今年は署名運動で現状維持…来年以降存続の危機も
【大阪】大阪府独自の健康福祉施策「街かどデイハウス」事業に対する補助金が、府の財政再建試案を受けて、来年度から見直されることが確実になった。同制度を利用して同胞高齢者らに日中の居場所を提供し、引きこもりや介護予防に携わってきた府内の民団各支部は頭を抱えている。事業の存続を求める署名活動などで今年度こそ現状維持が決まったが、来年4月以降はまったくの未定。府の財政的危機にも貢献しうる事業の見直しが必至となっている。
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サービスの回数半減も…経費削減必至
民団泉北支部(金徳植支団長)の街かどデイハウス担当者は「太田房江前知事の時から半額になると聞いていたので、ある程度は覚悟していた」と、あきらめ顔。「苦労してきたハンメたちにとって食事はいちばんの楽しみなので、これだけは削れない」という。豊能支部(金鍾煥支団長)では「街かどデイを継続するにしても、週5回の開設を3回にするなど経費をすべて半分にしないと」という。
東大阪市の「街かどデイハウス・コヒャン」は民団枚岡支部(柳相明支団長)が月・水・金の週3回開設している。毎回13〜15人が仲間とのおしゃべりを楽しみに通ってくる。府と市からの補助金は年間500万円足らず。補助金が削減されたらとの質問に「こちらから聞きたいくらい」と突き返された。
お年寄りの生きがい…「日韓交流の場」に
街かどデイハウスの関係者によれば、「デイハウスで会話を楽しむことで認知症の進行をストップできた事例もある」という。同胞のお年寄りには、頭と手を使う花札の効果が確認されている。八尾支部(朴清支団長)は毎回10数人の利用者だが、参加者の半分は日本人。ここは「日韓交流の場」だ。お花の先生だったというある日本人は、八尾支部で花を生けるのが生きがいになっているという。
街かどデイハウスを実施しているボランティア団体・NPO法人で構成する任意団体「おおさか街かど福祉ネットワーク」の権田千春会長は「街デイは1日あたり1600人くらいが利用している。放っておけば引きこもりや要介護の状態になる。これを仮に介護保険のような専門家がサービスを提供すれば、何十倍という費用がかかります。結果として医療費や介護保険給付金の増大につながることは明らか」と反発している。
「西成」3分の1に減額も、予防介護事業で苦境を脱す
街かどデイハウスと同様のふれあいデイハウスを運営してき民団大阪・西成支部(金重煥支団長)。ふれあいデイハウスは大阪市独自の制度だが、府より早く2年前から市の補助金がゼロになった。それでも、介護認定からもれた65歳以上のお年寄りを対象に通所介護事業所西成サランバンに衣替えし、運動機能の向上を図る独自のプログラムを開発した。
市からの補助金は以前の年間480万円から3分の1の160万円に減額されたが、予防介護事業に乗り出して苦境を脱した珍しいケースといえる。府内で街かどデイハウスを運営しているほかの支部にも参考になりそうだ。
サランバンの運営担当者の金春子さんは「事業所の認可を得るために行政に行っても、回しされるなど、不愉快な目にもあったが、いまは軌道に乗っている。お年寄りはふれあいデイハウスがなくなったら行くところがない。お年寄りから元気になった聞くとやったよかったと思う。条件さえクリアすればどこの支部でもできる」と勧めている。
「実情・ニーズ把握し、ルール作りを」
民団大阪本部のある関係者は、「今後の街かどデイサービス事業は、高齢者の方が新しい人間関係を構築するなど、継続的な支援になり得るため必要不可欠である。しかし、事業形態が社会的必要性の高い事業に移行していこうというのも理解できる。したがって、それぞれの事業所の実情・ニーズを十分に把握していただいたうえで、ルール作りをしていただきたい」と話している。
◆街かどデイハウス
主に65歳以上で、介護認定を受けられなかった高齢者たちが集まり、昼食やレクリエーションを楽しむ介護予防活動の拠点。住民参加型の非営利活動で、大阪府が98年から事業化した。28市町に約128カ所(07年度)。府の補助金の対象にならない大阪市、堺市の中核市を含めれば30市町158カ所を数え、利用者は約5200人余りに上る。民団でも泉大津をはじめとする7支部が韓国会館を有効活用して開設している。1施設あたりの補助金は600万円で府が4分の3、市町村が残りを負担している。07年度の運営予算は総額5億7600万円。
(2008.6.19)