反米唱える従北勢力
地域経済の活性化にも障害
済州道の民軍複合型の観光美港、すなわち済州海軍基地の建設に反対する勢力の過激な闘争で国全体が騒がしい。
利害当事国間の熾烈な海洋紛争は世界各地で起きている。アジア地域だけを見ても、日露間の4島嶼問題、中日間の尖閣諸島(釣魚島)問題、中国・フィリピン・ベトナム・マレーシア間の南沙諸島問題、台湾海峡問題など数えきれない。海は熾烈な国益争いの最前線である。
済州海軍基地建設も我が国にあって、安保と繁栄の鍵として重要な意味をもつ。海洋主導権競争が激しい国際政治のなかで、20年前から推進されてきた緊要な国策事業だ。同基地建設は次の理由による。
資源も宝庫の済州南方海域
第1に、安保的必要性である。済州基地は北韓の脅威と周辺国の海洋脅威に、効果的に対応することができる位置にあり、戦略的拠点の役割を担う。戦時の増援戦力の主要輸送路であるだけでなく、平時に北西島嶼やNLL(北方限界線)における紛争が発生した際、迅速に増援戦力を前方海域へ展開でき、東・西海を通じた北韓の迂回浸透を効果的に遮断できる戦略的な要所だ。
第2に、済州南方海域は海洋資源の宝庫であり、済州基地は私たちの海洋資源と海洋主権を守護するための必須基地だ。天然ガスなど230余種の海洋資源が埋蔵されているため、今後隣接国家間で紛争が発生する可能性が高い海域であり、島嶼領有権、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚境界画定など紛争発生時に素早い対応が必要とされる所だ。
第3に、済州海域は海上交通路の要所である。我が国の輸出入物資の99・7%が通過し、東アジアで韓・日・中・露間の最も複雑に入り組んだ海上交通路だ。特に、北極航路が開かれれば、既存のインド洋―スエズ運河―ヨーロッパ航路より、はるかに多くの商船が済州海域を通ることになり、交通密度がさらに高まる。
しかし、従北勢力はこのような重要な役割をする済州海軍基地を政治闘争の道具と見なしている。反対勢力は、住民投票による意見収斂と、補償問題が合法的な手続きと合意により進められると、建設現場の中にある文化財と動植物保護問題で粘り強く食い下がった。
2007年に建設計画が確定したのち、反対勢力がまず問題にしたのは軟サンゴの群落であった。これに対し、文化財庁はソウル大学海洋研究所に調査を依頼し、汚染物質が出たとしても軟サンゴには影響がないということを立証した。
すると今度は、建設現場の付近に生息するベンケイガニとジムグリガエルを問題にしてきたが、結局、全てを保護し環境が類似する場所へ移すことで決着がついた。また建設現場の中に神仏に祈願する場所があり、これを国家文化財に指定しなければならないと要求した。これについて文化財委員会委員らは、現地調査し歴史性や学術的価値が低いとの結論を出した。
宣伝・扇動で計画撤廃狙う
反対勢力はひとつの問題を提起して効果がないと、新たな題材を持ち出しては工事中断を試みた。ここまでくると彼らにとって、文化や環境とは本当に守るべきものではなく、海軍基地建設を阻止する目的で宣伝・扇動するための政治的道具に過ぎないとみなければならない。
反対理由が科学的な反証と適合性判定で論拠をなくすと、今度は政治的な論点に方向転換する。済州基地が米軍基地に用いられ、平和の島というイメージが毀損されるという根拠のない主張がそれだ。
日本の横須賀にある9000人あまりの米軍が駐屯する第7艦隊司令部基地は、なんと490万坪に達している。済州島東側の佐世保基地にも米軍3000人あまりが駐屯しているが、その面積は200万坪に達する。こんな近場に様々なインフラが完璧に揃った基地をさしおいて、一体なんのために狭い済州基地に米軍が駐屯しなければならないのか。
しかしいずれにせよ、従北勢力がこの問題を政治闘争の好機と見なす以上、完工するまでに予想される反対攻勢を根源から予防することが何よりも重要だ。
例えば、建設中にありうる万が一の人身事故、環境毀損問題、台風などによる施設安全管理問題、進行過程での不法・手抜き工事発生の可能性などを徹底して遮断し、透明かつ合法的に工事を進捗させていかなければならない。
世界7大景観威信をさらに
今後、基地が完工しても世界的な観光美港となるよう、中央政府や自治体、海軍を含む各機関の緊密な協調のもと緻密に推進されるべきである。
そうすることで、世界的な美港であり、軍港として広く知れわたるオーストラリア・シドニー、イタリア・ナポリ、米国・真珠湾などに肩を並べられる港にし、済州海軍基地に数多くの国の艦船や大型クルーザー船までが寄港することにより、地域経済の活性化はもちろん、世界7大景観に選ばれた済州島の威信を一層高めていくものと確信する。
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プロフィール
宋根浩(66) 海軍本部人事参謀部長、2艦隊司令官、合同参謀本部戦略企画部長、海軍作戦司令官、合同参謀本部人事軍需参謀本部長、合同参謀本部戦略企画本部長
(2012.5.23 民団新聞)