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議連が合同総会開催へ
政治力の見せ場…水面下で打開の動きも
A 「ほぐそう韓日関係」(8月15日付掲載)と題する座談会から2カ月が過ぎた。だが、両国の関係はこじれにこじれたままだ。そんな中、韓日議連と日韓議連の合同総会が11月30日、東京で開かれることになった。12日にソウルでもたれた合同幹事会で決まった。まずは朗報と言えるだろう。
B そう思いたい。11年11月以来、2年ぶりだ。韓日・日韓議連と言えばかつて、議論を交わし飲食をともにしながら、元老・中堅・若手とそれぞれのレベルで意気投合したものだ。しかし、前回の座談会でも触れたように、韓国では議員の早い世代交代、日本では政界再編があったのに加え、盧武鉉大統領と小泉純一郎首相の特異性もあって両国が背を向け合い、人脈が切れ、関係が薄まった経緯がある。
C 会せど議せず、議せど決せず、決せど行わず、の印象が残る議連だが、状況が状況だけに、意思疎通の場として復活するだけでも意味がある。関係悪化によって停滞した議連が、今度は、より険悪になった関係をほぐす番だと期待していいのではないか。わざわざ集まっておきながら成果なしとなれば、落胆を広げるだけでマイナス効果の方が大きい。双方ともに危機意識はあるはずで、開催が決定したからには、何らかの成算があってのこと、と見ている。
A そうあって欲しい。日本は自民党1強の時代だ。安倍晋三首相の支持率も高い。日本が簡単に軟化するわけではないだろう。目に見える成果を提示できなくともいい。最低でも、懸案をずらっと並べ、それらについて真摯に討議し、今後とも解決に向けて鋭意努力する、との合意発表はできる。それが関係修復への端緒になるかも知れない。韓日関係は今、そのレベルにあるということだ。
B 民団代表団が8月末に本国要路を訪問した際、政府や韓日議連の重鎮との間で、関係改善のための突っ込んだ議論を交わした。そこでは異口同音に、民団に橋渡し役を期待する声が相次いだ。非公式にはかなり意味のある申し合わせもあったと聞いている。韓日・日韓議連の再稼働をお膳立てするうえで、民団首脳陣もひと汗かいた感触がある。
C 民団は昨年から悪化した韓日関係について、その修復が容易ではなく、在日同胞に大きな負担になると認識してきた。今年の中央委員会で、「韓日友好促進」を3大運動の一つに組み込んだのはそのためだ。日常的な草の根の親善事業だけでなく、高度な政治レベルでも貢献する意思を盛り込んでいる。懸け橋を自認する民団にはそれだけ、何とかしたいとの思いが強い。
首脳会談の行方焦燥感は双方に
A この間、APEC(アジア太平洋経済協力会議)、ASEAN(東南アジア諸国連合)+3(韓日中)、EAS(東アジア首脳会議)などの多者外交の舞台で、韓日首脳が立ち話をしたとか、握手したとか、隣り合って座ったとか、そんなことが注目された。かつての厳しい冷戦時代の、敵対国どうしの首脳による接触みたいだったからね、まるで。
B 朴槿恵大統領はそれらの舞台で、中国の習近平国家主席と3回目の首脳会談を行い、序列2位の李克強首相と予定外の会談をもった。その半面、安倍首相とは10回ほど接触する機会があったのに、話しかけられれば形式的に受け答えする程度だったと韓国紙は報道している。日本の各メディアも、「日本と韓中との距離は縮まらない」のに、「韓中は蜜月関係にあり、対日同調を強めている」と報じた。
C でも、そんな図式で安易にとらえてもらっては困る。韓国は角逐する米中の間で気をもみながら、北韓問題もあって日本より中国を優先しているようではあっても、対中一辺倒にはなりようがない。韓国も表向きは首脳会談を急がないとの構えだが、めどさえ立たないことへの焦燥感がある。議連が合同総会の開催に漕ぎつけたのには、相当有力な政治家らによる打開に向けた動きが水面下であったのは間違いない。
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「通中封日」と「韓国不要論」
「悪魔は細部に宿る」…思慮深く慎重な対応こそ
次々に浮上する歴史がらみ難題
A 韓日間に横たわる問題は、簡単にずらっと並べられるほどの数ではなく、しかも、減るどころか増えている。ニューヨークで先月末、尹炳世外交部長官と岸田文雄外相が7月(ブルネイ)に続いて2回目の会談を行った。そこで論議されたものだけでも多岐にわたる。北韓の核・ミサイル、歴史認識、独島、慰安婦などのほかに、福島第一原発事故とそれに関連する水産物輸入禁止措置、旧徴用工の個人請求権、九州・山口の近代化産業遺産群の世界遺産登録、ヘイト・スピーチなど新たに浮上した問題も含まれた。
B 韓日間の懸案のほとんどは、かつての支配・被支配関係に根源を持つか、そこから派生している。新たな問題もその脈絡から外れてはいない。言い換えれば、2年後には支配・被支配の関係が終わって70年、国交が正常化されて50年になろうというのに、解決できなかった問題、あるいは解決したつもりがそうでなかった問題が余りにも多いということになる。しかし、だ。そうでありながらも両国は、善隣友好の基盤を固めてきたし、政治的にも良好な関係を続けて来たことを忘れるべきではない。
C 根本解決が困難な問題であればあるほど、韓日両国の為政者や発言力のある人たちは相手をおもんぱかり、慎重に対応すべきだということだね。
B そうだ。やってできないことはない。それができていたから良好な時代があった。
C ただ、水を差すわけではないが、これまでとは違う困難さもある。歴史に根差す韓日、日中の構造化されたアツレキが安保にまで直結しかねないからだ。最大変数として、中国の軍事面を含む急速な台頭があり、東アジアにおける米国を中心とした安全保障システムの弱まりがある。北韓リスクを抱える韓国は、対米同盟を重視しながらも、米と対峙する中国とも「蜜月」を維持したい。その中国と尖閣諸島(中国名=釣魚島)問題で抜き差しならない関係にある日本は、中国の軍事的脅威を公然と訴え、その対応に腐心している。日本は対中政策を優先基準にして韓国に対応する姿勢を強め始めた。
B 安保問題も絡むからこそ、韓日にはこれまで以上の英知が必要だ。相手を敵視し続ければいずれは本当の敵になるという「安全保障のジレンマ」にはまっていいはずがない。韓国には与野党を超えて、韓中連携で対日圧迫を強めようとする意識が少なからずある。「通中封日」だ。日本では一部とはいえ気が早いもので、「アチソン・ライン」(米国務長官アチソンが50年1月に発表。マーシャル列島‐日本‐沖縄‐フィリピンを太平洋における米国の防衛ラインとした。韓国を除外したことで6・25韓国戦争を誘発したとの批判も)を持ちだしての「韓国不要論」も芽吹いてきた。
A 韓日中3国の経済関係は厚く、切り離せるものではなくなった。国内の矛盾が深刻で、いずれ激動は避けられないとされる中国だが、韓日にとって不可欠の一大市場だ。中国のそうしたリスクを韓日は十分意識しており、共同対処しなければならないことも熟知している。「通中封日」や「韓国不要論」は、具体的な政策にはなりようがない。ただ、それらが「気分」や「心理戦」の領域にあるに過ぎないと言っても、お互いを消耗させ政策を縛りつけることは間違いない。相手を考える思慮深い言動が求められる。
B 例えば、李明博前大統領の独島上陸(昨年8月)、麻生太郎副総理と168人の議員団による靖国参拝(今年4月)、国会でそれを語気も荒く庇護するばかりか、「侵略の定義は定まっていない」とした安倍首相の発言、いずれもあってはならないことだった。
C 韓国政府は20年の五輪開催都市が決定する40時間前に、福島県などの水産物輸入を全面禁止すると発表した。これは秋夕を控えた韓国で放射能汚染食品への不安が広がり、それに対する鄭 原国務総理の「福島怪談流布者処罰」発言が反発を呼び、これを急ぎ収集するためだったとも言われる。それにしても、9日からの禁止措置であれば開催地決定後にすべきだった。発表のタイミングが超過敏だった日本側の神経を逆立てたのは言うまでもない。
B 九州・山口の近代化産業遺跡群の世界遺産登録問題でもそうだ。韓国はこれに、韓国人の強制労働があった産業施設だったからと反対するのではなく、登録を推進するのであればその史実を施設に銘記するよう求めるべきで、反対までする必要があったろうか。
「談話」踏襲する姿勢はっきりと
A 日本政府はこの4月以降も、従軍慰安婦への強制性と軍の関与を認めた河野談話(93年)、植民地支配と侵略によってアジア諸国に多大な損害と苦痛を与えたことを謝罪した村山談話(95年)、これらの歴史認識を踏襲しているとたびたび言明してきた。だが、安倍首相自らがそれに徹しているとは思えない。
B 今年の8月15日の全国戦没者追悼式の式辞で、93年に細川護煕首相以来、自分自身を含む歴代首相が欠かさず言及してきた「加害責任」に、安倍首相は触れなかった。
C 先月の国連総会での安倍演説も首を傾げざるを得ない。「武力紛争のもとで女性に対する性的暴力がやまない現実」を指摘し、「犯罪を予防し、不幸にも被害を受けた人を支えるため、我が国は努力を惜しまない」として、3年間で30億㌦を超える途上国援助を実施するとの表明だった。明らかに、従軍慰安婦問題に対する国際的な批判を意識したものでありながら、そのことには口をつぐんだ。
B 「安全保障のジレンマ」とも共通するだろうが、ドイツの文化思想家の言った「悪魔は細部に宿る」という言葉を引き合いに、自国に自制を促す韓国メディアもあった。大きな方向が正しくとも、小さな不始末で台無しにするとか、より大きな問題を生むことになるという警句だ。双方が肝に銘じるべき言葉だろう。
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国交正常化50周年が迫る
まずは五輪で協力…市民レベルの交流は健在
A ニューヨークでの韓日外相会談では、18年の平昌冬季五輪と20年の東京オリンピックがともに成功するよう協力することも論議された。議連の合同総会でも議題になる予定だ。世界の耳目が東北アジアの2国に注がれる。スポーツ振興や経済効果の最大化に向けて連携する意味は大きい。この前向きな課業に全面的に協力し合うことで、負の連鎖を断ち切る空気が広がればと思う。
B 朴槿恵氏は選挙中、大統領として独島に上陸する可能性を強く示唆していた。安倍首相は、第1次政権時に靖国神社に参拝できなかったことを「痛恨の極み」としてきた。しかし、ともに見送っている。こうした自重、自制を有力者自ら率先すべきだ。朴大統領は国際舞台での対日批判を抑制し、安倍首相は自ら見直し論を提起してきた河野談話と村山談話について、しっかり踏襲するとの証を見せる必要がある。言い換えれば、韓日関係をまずは、李前大統領の独島上陸以前の状況に戻すということだ。
C 2年後には韓日国交正常化50周年を迎える。協定をめぐる「新事実」や「秘話」だの「新解釈」だのが溢れてかまびすしくなるだろう。関係が現状のまま推移すれば、目が当てられなくなるかも知れない。平昌と東京のオリンピックにも影響が出るだろう。時間的な余裕はあまりない。
A 従軍慰安婦や徴用工の個人請求権問題について、日本は韓日協定で解決済みという立場だが、韓国では慰安婦の補償問題に努力しないのは違憲(11年8月。憲法裁)とされ、徴用工の個人請求権は消滅していないとの判断(12年5月。大法院)も下された。この難問にもまったく打つ手がないわけではないようだ。
B 慰安婦問題について最近、韓日の前政権時代の末期の、関係が悪化してからのことながら、政治決着の寸前まで辿り着いていたことが明らかになった。まず、駐韓日本大使が元慰安婦に謝罪し、これを受けた首脳会談で日本が償い金などの人道的措置をとることを表明、その原資には政府予算をあてる。韓日双方から異論が噴出するとしても、民間からの寄付を原資にした「アジア女性基金」よりかなり前進する構想であり、まずまずの着地点と言っていい。双方の政権交代によって頓挫したとはいえ、双方に確固たる政治意思があれば展望が開けることを示したのは大きい。
C 旧徴用工の個人請求権問題では、韓国の法廷で原告勝訴の流れがあり、日本企業の韓国内資産が差し押さえられる可能性まで取り沙汰されている。しかし、原告側も差し押さえの実行には慎重で、企業側が賠償金を自主的に支払うよう促す方針という。個人請求権については歴代韓国政府も、協定で解決済みとの立場を変えていないからだ。この問題でも追加的・補正的な措置で解決できる可能性を見い出せる。
A 確かに悪い流ればかりではない。身近なところでも実感できる。先月、日比谷公園で開催された「韓日祝祭ハンマダン」は昨年を大きく上回る人手で賑わった。高円宮久子妃、安倍首相夫人の昭恵さん、それに岸田外相も参加した。先の外相会談で岸田外相は、「国民間の草の根レベルの強固な関係を実感した」と述べている。
「憎悪表現」判決ともに高く評価
B ソウルでの同じ祝祭も、弘前ねぷたなど日本を代表する祭り演目が多数出場して4万人で賑わった。運営をサポートするボランティアも過去最高の700人だった。韓日の会場ともに、市民レベルの交流が健在であることを見せつけた。
C ヘイトスピーチを許さないとする日本市民のうねりが力強い。京都地裁が京都の朝鮮学校に街宣をかけた「在特会」に、新たな街宣の差し止めと高額賠償を命じた。これらも明るい兆になる。嫌韓を隠さない媒体も含めて、日本メディアがこの判決を一斉に歓迎した。韓国メディアも日本の「良心」と高く評価している。
A 今はまだ、韓日間のマイナス材料は裸眼で見て、プラス材料は拡大鏡で見るべき時期だ。そのような視点で、議連の合同総会を成功させ、各種の意思疎通を密接にするよう期待したい。第2次安倍政権の誕生が昨年12月、朴槿恵政府の出帆が今年2月だった。首脳会談の年内実現は難しいとされるが、遅くとも両国の新指導体制のスタートから1周年の真ん中、来年1月あたりには実現してもらいたい。
(2013.10.16 民団新聞)