ドキュメンタリー写真家、権徹さん(47)が、ハンセン病回復者の素顔に迫ったフォト・ドキュメント『てっちゃん‐ハンセン病に感謝した詩人』を出版した。
ハンセン病回復者の多くは病気との闘いの痕を後遺症として残しており、カメラを向けられるのを忌避しがち。しかし、表題の「てっちゃん」こと桜井哲夫さん(仮名)は、権さんが構えるカメラに「ゴンちゃん」と、豊かな表情で応えている。
ハンセン病は東京・新宿の歌舞伎町とともに、権さんが東京の写真専門学校通学中から追い続けてきたテーマ。桜井さんとは97年秋、群馬県草津市の国立ハンセン病療養所栗生楽生園内の詩作グループ「栗生詩和会」で出会った。
権さんはある日、消灯時間に6畳1間の部屋でひとり暮らす桜井さんを訪ね、布団を並べて語り合った。権さんは慶尚北道、桜井さんは青森県と出身地こそ違え、同じリンゴ農家の出身。2人は急速に親しくなっていった。権さんはハンセン病回復者の人生を長期的な撮影テーマに決めた。
実は権さん自身、「癩病は恐ろしい病気」と教えられてきた。栗生楽生園で初めて顔面や手足の変形を目の当たりにしたときは、「ワーッ!」という抵抗感があったという。しかし、詩人としての桜井さんの生き様にのめりこんでからは足かけ14年間にわたって被写体として記録してきた。
写真集の出版は桜井さんの死去がきっかけとなった。彩流社(℡03・3234・5931)。税別2000円。
(2013.12.25 民団新聞)