【大阪】大阪市生野区の「コリアタウン」の一角に「民族・国境・ハンディをこえて」あらゆる奉仕活動に取り組む「コリアボランティア協会」(久保麗子代表)がある。高齢者・障がい者に対する無償介護を中心に、生活困窮者への日常生活面でのケア、東日本大震災の被災地にも支援の手を差し伸べる。1月30日に満20周年を迎えた。
高齢・障がい者中心に
協会がめざすのは「誰もが共に活き活きと暮らせる社会」。
障がい児の家族と共に過ごす「みっくす家族レクリエーション」は2カ月毎に実施している。また、東日本大震災で打撃を受けた被災地支援では、孤独なお年寄りたちと文通を重ね、仕事づくりのためにと「手作りカイロ」の製作を依頼し、販売している。
同協会の前身は「あらゆる人が利用できる文化交流の場」として在日2世の書道家、康秀峰さん(65)が92年に発足させた「コリア文化ホール」。康さんは利用者の中に手話教室や障がい者団体の利用が多いことから、「障がい者の受け皿となる場所が少ない」ことを痛感した。
康さんは物心ついたときから障がいを持つ兄と弟の世話をしてきたからだ。自身、16歳のときにリューマチにかかり1年間、寝たきりになるという経験もしている。「弱い者、傷ついた者を助けなくては」という漠然とした思いはやがてはっきりとした一生の夢に変わり、94年に民団を含む約300にのぼる個人・団体の賛同を集めてコリアボランティア協会を発足させた。
95年1月に阪神淡路大震災が起こると、協会を被災した障がい者の受け入れ場にし、さらに「目に見えない苦しみが分かるように」と、被災地に飛んで2年間、炊き出しなどの支援活動に奔走した。康さんは「ボランティアというより、毎日が命がけの活動でした」と振り返った。
この間、ある同胞から「なぜ、そんなにまでして日本人に尽くすのか」と言われたこともあった。康さんはこう答えたという。「国境はそもそも支配者が勝手につくったものだから、国境を越えて世界に奉仕するのは当然。それに、われわれがボランティアに取り組み、社会に貢献すれば、日本人が在日韓国・朝鮮人に対して持つイメージも変わってくるはず。そのことが『共生』につながるだろう。在日というデメリットをメリットにしなくては」。
大阪府から「草の根人権賞」(04年)、大阪市からも「地域福祉貢献賞」(07年)を受賞した。03年には外国人として初めて大阪市生野区社会福祉協議会理事にも任命された。
康さんの体調不良に伴い、代表は昨年、久保麗子さん(55)に引き継がれた。久保さんは「地域のネットワークをつくり、協会が地域からかわいがられるような位置づけにしていきたい」と話す。年に数回、歌と語りのミニコンサートを開催していくという。
運営費は書道の師範でもある康さんが運営する書道教室の収入と、さまざまな人たちからのカンパが頼り。介護、救助にはどんな高い金額が必要になろうともいとわない姿勢で活動してきたが、資金不足は否めない。協会では震災支援や被災者の仕事作りへのカンパ支援を募っている。
振り込み先は、郵便振替00920―6―29408 コリアボランティア協会。
(2014.2.12 民団新聞)