掲載日 : [2015-09-09] 照会数 : 6087
植民地下日本人からの預かりもの「返したい」…古書、掛け軸、メダルなど70点
[ 大澤儀三郎さんの名前が刻印されたメダル ]
岐阜の機織り職人大澤儀三郎さんか
韓国人3代が保管
【ソウル】植民地下の慶尚北道大邱市で、日本人から「すぐに取りに来るからしばらくの間だけ預かっておいて」と託された荷物が、当事者・崔鐘慶さんの孫にあたる秉徳さん(69、ソウル市)の家にいまも大事に保管されていることがこのほどわかった。秉徳さんは「日本にいると思われる子孫に返還したい」と話している。
預けたのは縮緬の産地、岐阜県に在住していた機織り職人、大澤儀三郎さんと推定されている。預かり物を確認したところ、大澤さんが1880年に「宮城県博覧会」に縮緬五種を出品したことが分かる複数のメダルが見つかったからだ。
秉徳さんが父・快永さんに聞いたところによれば、大澤さんと思われる日本人が生死の境をさまよう重病を患い、医学者で韓方医としても著名だった大邱市の祖父・鐘慶さんのもとを治療に訪れたのが始まりだった。
この日本人は病気が回復してからも鐘慶さんを「命の恩人」と頼り、訪韓のたび大邱市に立ち寄り、数日間ほど逗留していくほど親しい間柄となった。しばらくして、「後で取りに来るから預かってくれ」と大きな3箱の荷物を置いていった。しかし、それっきり消息が途絶えた。1943年ごろのことだった。
祖父亡き後は、父の快永さんが保管を引き継いだ。祖国解放や韓国戦争のなか避難と引っ越しを重ね、こうした混乱のさなかで一部は散逸してしまった。秉徳さんが現在もソウル市内の自宅で保管しているのは当時の10分の1ほど。それでも、古書、絵画、額縁、掛け軸、各種メダルなど60〜70点を数える。
秉徳さんは「お金が無くて治療費の代わりに置いていったという可能性もあるが、その人の家族がわかれば連絡をとりたい。日本大使館に相談してみようかとも思っている」と話す。
秉徳さんの話を人づてに聞いて日本での手がかりを探している在日2世の金日権さん(東京トラジ会会長、豊島区)は、「国境を越えた人間どうしの信頼が、3代にわたって続いていることに胸を打たれた」と話している。メダルには大澤さんの名前とともに岐阜懸美濃國厚見郡小熊村の住所が刻印されている。
(2015.9.9 民団新聞)