
ネット販売で活路開く
国際色豊かな大阪の鶴橋商店街。歩いていると、チマ・チョゴリを売っている店も数軒見られる。なかでも、ひときわ規模の大きいのが新興商会だ。表にずらりと並んだ韓服や布団が、その色鮮やかさで人を呼び込む。
同商店街は日本の敗戦直後、鶴橋駅周辺に露天商が集まり、自然発生した「闇市」を起源とする。47年には「どこよりも安く、なんでもそろう」をうたい文句に鶴橋国際商店街連盟が結成された。新興商会は創業から60年の老舗。連盟ができて間もなく産声を上げたことがわかる。
現在の社長は安伊三男さん(67)。創業者、金一姫さん(83)の長女の婿にあたる。オモニどうしが知り合いだったことから68年に結婚。店を手伝うようになった。
当時、20軒ほどが民族衣装を商っていた。生地は群馬や山梨、福井などから仕入れ、レースやスパンコールなどをあしらって付加価値を高め、販売していた。
韓国から生地が入るようになったのは、88年のソウルオリンピックのころから。派手さのなかにベーシックなものが調和した生地が、「上品できれい」と大きな人気を呼んだ。
1回に5、6着、多いときは10着まとめての注文も。成人式、誕生日、七五三などの晴れ着として人生の節目を飾る盛装として欠かせないものだった。「当時の1世に韓服を借りるという概念はなく、それぞれ記念として仕立てたもの」
現在、店で取り扱っている韓服は約250種類。婚礼衣装の注文を受けると、サイズを測りながらそれとなく新婦の好みを探り、最良の色の組み合わせとデザインを考える。
いまは「足を運ばなくても購入できる」からと、ネットでの注文が多い。需要に合わせ、レンタルのコーナーも設けている。人気はドレスを思わせる優雅なデザインだ。「韓国ドラマの普及のせいか、お客様には予備知識があり、細かい部分に至るまでこだわりがある」と安さん。
注文から出来上がりまで約1カ月。平均的な購入価格は10万円ほど。一般的なチョゴリなら6〜7万円ほどで、納期も2〜3週間と短い。
最近は韓国から直輸入しているふとんやカーペット、シーツなどの生活雑貨類も売れている。昔に比べて風合いや見栄え、質も向上し、売り上げ全体の約半分を占めている。国際結婚の増加で最近はブラジルやヨーロッパからの来客も多い。
「商売は、ただ単に売り買いだけで終わるものではない。人と人のつながりがあってこそ成り立つ。これがすべての原点です。これからもチマ・チョゴリを通じたたくさんの出会いを楽しんでいきたい」。
そう話す安社長のそばでは、いずれ3代目を継ぐことになる30代の子息が店に立ち、自分の感性を加えた新しいデザインを模索している。
(2015.9.16 民団新聞)