掲載日 : [2022-03-03] 照会数 : 2950
「外国籍だと調停委員になれない⁉」 「当然の法理」を問う
[ 梁英子弁護士(オンライン画面) ]
兵庫県弁護士会 市民シンポ聞く
【兵庫】韓国籍の梁英子弁護士(47、兵庫県弁護士会)が神戸家庭裁判所から最高裁への家事調停委員としての任命上申を拒否されてから今年で20年。梁弁護士を推薦した同弁護士会は2月19日、神戸市内で市民シンポジウム「外国籍だと調停委員になれない⁉」を開催し、あらためてこの問題の不当性を訴えた。基調報告に立った吉井正明弁護士は「この問題については絶対にあきらめるわけにいかない」と強調した。
任命拒否から20年
家事調停委員とは離婚や遺産相続など家族間のもめ事を、当事者双方の間に入って言い分を調整し、助言する役割。「こうしなさい」という立場ではなく、「人としての力」が求められているとされる。身分は非常勤の公務員であり、「調停委員規則」に「日本国籍を要する」との規定は一切ない。
2003年、神戸家庭裁判所から家事調停委員の推薦依頼を受けた兵庫県弁護士会は家事事件に経験が深く、家庭裁判所からの信任も厚かった会員の梁弁護士を候補者として推薦した。当時、推薦委員会を担当していた白承豪弁護士から打診を受けた梁弁護士もその場で「やります」と即答した。
しかし、神戸家庭裁判所は04年1月、梁弁護士が韓国籍であるということだけで最高裁への任命上申を拒否。「公権力の行使又は国家意思の形成への参画にたずさわる公務員になるためには日本国籍を必要とする」とした1953年の内閣法制局見解「当然の法理」を追認した。
この問題について白弁護士は「調停制度は弁護士として避けて通れない」としながらも「現場で公権力を行使することはない」と否定している。梁弁護士も「調停の現場で公権力を行使していたらまとまるものもまとまらない」と指摘し、現場感覚とずれていることを指摘した。
これまでに国籍を理由に調停委員などの採用を拒否された韓国人は兵庫だけでも3人。なお、東京、神奈川、京都、大阪、岡山などを含めると、全国で14人(21年10月現在、日本弁護士連合会調べ)を数える。シンポ開会にあたって兵庫県弁護士会の津久井進会長は「私たち弁護士会の誇りを傷つけた。理不尽以外のなにものでもない」と怒りをにじませた。
兵庫県弁護士会から依頼を受けた近畿弁護士連合会は06年7月、近弁連理事会内に「外国籍の調停委員採用を求めるプロジェクトチーム」を設置。10年3月には「外国籍者の調停委員任命拒絶に抗議する決議」をあげている。
また、任命を拒絶された会員が所属する傘下の単位弁護士会でも今日まで「国籍を問わず調停委員の任命を求める会長声明」などを次々に発表してきた。2月9日には大阪弁護士会から「外国籍会員の調停委員任命上申拒絶に抗議する会長声明」が出ている。
(2022.03.02 民団新聞)