掲載日 : [2022-03-24] 照会数 : 4241
北韓の欺まん性認定…北送責任で初判断 東京地裁
[ 判決後の報告集会(東京・千代田区の法曹会館) ] [ 北韓の不法行為を糾弾する原告側支援団体(東京地裁前) ]
北韓政府による北送責任を問う訴訟の判決言い渡しが23日、東京地裁であった。五十嵐章裕裁判長は北韓による不法行為を認め、原告側が多大な損害をこうむったとの原告側の主張をほぼ認めた。ただし、朝鮮総連を使っての勧誘行為に乗って北に渡ってから46~58年、脱北して日本に戻ってから提訴までに13~17年かかっていることからすでに除斥期間を経過しているとして損害賠償の訴えそのものは却下した。同裁判では元在日同胞と日本人妻の脱北者5人が各1億円の損害賠償を求めていた。
北送責任で初判断 損害賠償は時効の壁 東京地裁
5人は1960~72年に北に渡り、01年以降に脱北し、日本へ入国した。訴状によれば、原告側は事実と異なる北韓の宣伝勧誘と北韓からの出国妨害行為を一体のものとしてとらえ、こうした人権侵害は北韓を脱出した時点まで続いていたと主張してきた。
被害者が北韓から脱出したのは最も早いものでも01年であり、加害行為の終了から20年を経過していない。すなわち、いまだ除斥期間を経過していないとの論理だった。
判決でも人権侵害を受けた原告側の主張をほぼ認定。北送は北韓が主導したもので、その意を受けた朝鮮総連が「地上の楽園」といった事実と反する宣伝行為で原告らを北に手引きしたと述べた。いわば、北韓がだまして北への渡航を決意させたもので「(北韓は日本が承認した国家ではないため)主権免除の原則が適用される事案ではないと述べたのは画期的」と原告側弁護士は評価している。
にもかかわらず、北韓が出国を許さず、国内に留め置いた行為との一体性については、日本の裁判所に管轄権がないとして棄却した。北韓が事前に計画したことと主張してきた原告側代理人の福田健治弁護士は「そこまで認定しておきながら北朝鮮政府の責任を認めなかった」ことが理解できないという。「一審の訴えに耳を傾けてくれればまた違う展開があるのでは」と控訴審に期待をかけている。
同じく崔宏基弁護士は「時間の壁で負けてしまったが、逆にいえば20年以内の不法行為については救済の道が開かれたといえる。今後の人権侵害の救済には明るい見通し」と前向きに捉えていた。
留め置き行為棄却には不満原告3人が会見
原告の一人、川崎栄子さん(79)は、日本の裁判所が北韓政府をさばく相手として認めたこと自体は評価しながら、出国を認めなかった「留め置き行為」について門前払い同様の判断を示したことに不満を隠さなかった。「原告5人のうち、2人は健康上の理由で参加できなかった。たとえ控訴しても、生きて結果を見られないかもしれない」。
同じく、元在日の石川学さんは「われわれが北に行ったことを帰国と言っている。北に行ったこともない在日なのにどうかな」と違和感を表明した。
日本国籍の斎藤博子さんは「日本人妻ならば2、3年もすれば帰ってこられると言われた。ならば、2、3年は我慢してみようかなと思ったのが40年も暮らした。拉致被害者と別にしないでほしい。日本人を助けて」と訴えた。
(2022.03.30 民団新聞)