掲載日 : [2005-05-11] 照会数 : 3361
李明守税理士の同胞税務相談(05.05.11)
自社株式の継承法…後継者に全移転を
Q 私は3歳のときに、慶尚北道の金泉の山村から母と姉とともに渡日しました。父は前に渡日していましたが、すでに病気で十分に仕事ができる体ではありませんでした。母が一家の生計を立て、私はものごころついてから仕事に就きました。1日中タバコくずなどを売って闇市で日銭を稼ぎ、家にカネを持ち帰りました。近所に同胞がいましたが、皆その日の糧を得るのに死に物狂いでした。
渡日前、父は韓国では両班(ヤンバン)で、広大な土地を所有し、李舜臣将軍の銅像がある小学校の教師をしていました。亡き父の韓国での遺産は、所有権を5年前に放棄しました。
以前、故郷を数十年ぶりに訪ねたところ、村人が、父の所有していた山林田畑を法令(所有者不明物件の強制国有化に関する法律)に反し、持ち主がいつか帰ってくるだろうと父名義に保留したままでしたが、そこで農業を営んでいるのを見て、放棄しました。
私も今では70歳を数え、このたび、一代で築き心血を注いだ会社の自社株式を後継者である長男Aに生前贈与又は遺贈しようと思います。が、税負担を考え、日本人と結婚し帰化した次男Bやアメリカ人に嫁いだ長女Cにも株式を与えようと考えています。子孫が仲良く安定した暮らしをしていける基盤をつくれれば、思い残すことはありません。
A 在日社会も百年が過ぎ、事業後継者は2代目、3代目を迎えています。いうまでもなく、時代は大きく変化し、計数管理やIT経営なくしては競争に負けてしまいます。後継者を「経営者」として育てる必要期間は平均で10年以上という経営アンケート結果もあります。事業承継の問題は、後継者育成と税金対策、ご質問のような株式移転が中心です。
同族会社においては、創業者が自社株式の大部分を所有することにより会社を支配し経営しており、社長が元気で目配りできる状態では不都合はないでしょうけど、社長がいなくなった後はどうでしょうか。
御社において、将来、社長御自身に相続が発生し、長男Aが跡を継いで社長に就任、自社株式の一部を相続したとしましょう。その後ずっと年が経ち、A氏の子供Dが3代目社長となった時点で、株式はD氏やその兄弟とその従兄弟(次男Bや長女Cの子供達)が所有しています。D氏は会社財産の処分や経営方針の決定に関する調整に苦悩し、また、株式がさらに分散、株主の国籍や民族も多様化しそうで、株をどのように買い集めようか頭を痛めることでしょう。
このように、同族経営で自社株が複数に分散所有されている体制では、将来に多くの問題を惹き起こすことになるでしょう。
社長のお気持ちはよくわかりますが、ここは遠い将来も見すえて、自社株式は後継者だけに移転なされてはいかがでしょうか。後継者以外の方々については、株式を持たずとも役員であれば報酬を受けることができますし、また、株式以外の不動産などを遺贈することなども考えてみてはどうでしょうか。
*略歴 イ・ミョンス。1958年下関生まれ。青年会中央副会長などを経て税理士の資格取得。福岡韓国商工会議所理事、福岡納税経友会顧問。李明守税理士事務所℡092-415-3111。(毎月1回掲載)
(2005.05.11 民団新聞)