アントニオ古賀、ベー・チェチョル
ヴォイス・ファクトリイ主催(輪嶋東太郎代表)「アントニオ古賀&ベー・チェチョル 永遠に伝えたい古賀メロディーの夕べ」が6月10日、東京・渋谷区の古賀政男音楽博物館内「けやきホール」で開かれた。
第1部は古賀政男の愛弟子であるギタリストで歌手のアントニオさんが、5000曲とも言われる古賀メロディーの中で、1曲だけ歌詞のないギター曲「月のベランダ」を演奏。哀愁を帯びたメロディーは観客の心をとらえた。
古賀氏は生前、この曲を「できの悪い子(ヒットしない曲)」と話し、アントニオさんに「お前が後世に育ててほしい」と話したという。アントニオさんの小学5年生の息子、音弥さんが「悲しい酒」などを大人顔負けの腕前で弾きこなすと大きな拍手が送られた。
アントニオさんは「先生の曲は愛があるから共感がある。若い人に古賀メロディーを受け継いでほしい」と話した。
第2部は「アジア史上、最高のテノール」と称され、ヨーロッパの歌劇場で活躍していた05年、甲状腺がんにより声を失うも、奇跡的に復活を遂げたベー・チェチョルさんが、アントニオさんの伴奏に合わせて「影を慕いて」「悲しい酒」などを熱唱した。
実はベーさんの父は大阪生まれ。「父親がファンだった美空ひばりの歌を通して、子どものころから古賀メロディーを聴いてきた」という。
自身のリクエストで「月の砂漠」を奏でるアントニオさんをじっと見つめていたベーさんは「ギターへの思い入れがある。手術して声を無くした時、歌いたいという気持ちを抑えられず、ギターを買ってずっと抱えていた時期がある」と当時の心境を語った。
圧巻は、イタリア人歌手、アンドレア・ボチェッリの代表的オペラティック・ポップ楽曲「君と旅だとう」(原題 コン・テ・パルティロ)を歌ったときだ。伸びのある力強い歌声に会場から歓声が上がった。
最後は唱歌「故郷(ふるさと)」を観客と合唱した。会場にはベーさんと親交を深めてきた医師、日野原重明さん(103)の姿もあった。
(2015.7.8 民団新聞)