掲載日 : [2008-10-08] 照会数 : 9358
フラッシュ同胞企業人<27>世界一美しい服に誇り
[ 1948年京都生まれ。京都府立木津高校卒。日本企業に勤務後、68年から新興商会に入り、03年に代表に。2男1女、孫4人。 ]
大阪・鶴橋でチマ・チョゴリ専門店
新興商会の安伊三男代表
在日同胞の代表的な集住地域、大阪・鶴橋。駅前の鶴橋商店街で、義母の金一姫さんとともに民族衣装チマ・チョゴリを販売しつづけて来た。
オモニの匂う街
「戦後の闇市時代から住みつくようになり、いまや鶴橋商店街の店舗数は1000軒。韓国関連の商品はないものがない」
商店街のキャッチフレーズは「鶴橋はわが民族の故郷」。かつて1世は大阪にまず来てから、全国に散らばった。「ここはオモニの匂いがする地域」だと強調する。
創業は1955年ごろ。母親同士が知り合いだった縁で、68年から手伝うことになり、長女の金玉子さんと結婚した。
「1世は祭り好きで、祭りのたびに女性たちはチマ・チョゴリを着用した。おかげで、朝7時半から午前零時まで仕事に追われた」と振り返る。「教えられたことはなく、見よう見まねで習った。ここまでやってこれたのは、すべて義母のおかげ。人生に悔いはない」と語る。
韓国の市場と同じ雰囲気の店頭には、型の見本だけで100種類を超すチマ・チョゴリが並ぶ。色別にすれば数倍になる。洋式化したドレスチョゴリも登場した。
「最近は、子どもの百日やハンドル(満1歳)、七五三、とりわけ成人式の祝い事に合わせて着用することが多い」。また、還暦や葬儀用(チョルスオッ)の注文も少なくないという。
「在日の好む色や柄は華やかなものが主流だったが、最近は、本国から輸入されたもので、ベーシックで落ち着いたものが増え、それだけ、選択幅が広がった」。好みの多様化にあわせ、ウェディングドレスやフォーマルドレスなど、洋式化した商品も増えた。レンタルチョゴリのコーナーも設けている。
鶴橋商店街の韓服店は、以前は20軒ほどあったが、半減した。そこで、ホームページや通信販売を共同で活用するほか、カレンダーを全国に発送するなどPRに努めている。
日本人客が2割
お客は、北海道から九州まで全国各地から訪れる。「韓国で生地の製造、日本で縫製を行うため、出来上がりまで3週間はかかる」。2〜3万円の安く手軽な既製品もあるが、ほとんどがオーダーメイド。セット価格8〜12万円に人気がある。
「顧客が何を求めているか、年齢や雰囲気から心を読むことがポイント。全国からわざわざ訪ねて来るので、時間をかけて納得してもらえるよう、誠心誠意の気配りをする」。後日、心のこもった礼状が来たときほど、「うれしいものはない」。
近年、韓流の影響で地方からツアーで訪れる観光客が増え、レンタルチョゴリで写真を撮ったりする。小物もよく売れる。「時代が変わった。カラオケや舞踊、学校の卒業式用にチョゴリをあつらえる日本人が増えた。昔の顧客は同胞が100%、今は日本人が2割ほどを占める」
妻と2人の息子、さらに嫁まで動員し、3代で店に立つ。「いろいろな人との出会いが楽しみ。これからは同胞だけでなく、日本人にも愛用されていく。チマ・チョゴリの色や柄の美しさは世界一だ。同胞はその魅力を誇りにしてほしい」
■□
新興商会=大阪市東成区東小橋3‐15‐9(℡06・6971・0671)
(2008.10.8 民団新聞)