掲載日 : [2009-05-13] 照会数 : 10123
フラッシュ同胞企業人<36>オモニの知恵伝え50年
[ 1941年兵庫県明石市生まれ。法政大学経済学部卒。ホルモン幸楽代表。民団秋田県本部常任顧問。2男1女。 ]
激安ホルモン鍋専門チェーン店
「幸楽」の孫良男代表
10種類の内臓で
安くておいしいのが受けるのか、最近、ホルモン焼きがブームだ。そのホルモンを焼くのではなく、ジンギスカン鍋で食べる店を50数年にわたり続けてきた。
「かつて日本人に内臓を食べる習慣はなく、食肉処理場で捨てていたホルモンを、同胞が七輪で焼いたのが始まり。それをオモニがプルコギ風のホルモン鍋として登場させた。ホルモン料理は1世の知恵と工夫の結晶といえるものだ」
豚と牛の小腸や大腸、センマイ、ミノ、タン、ハツなど10種類ほど入ったホルモンは、1人前330円。それと一緒にジンギスカン鍋に、トッピングとして山盛りのキャベツや豆腐、キムチなどをのせ、甘辛たれをかけて食べる。
「キャベツから出た汁をご飯にかければ、ホルモン丼になる。これがうまい」と通の食べ方を説明する。
年中無休で、朝8時から仕込みを始めると同時に店を開け、夜11時まで営業。
「ホルモンは消化が良く、ヘルシーで飽きない。毎日のように通う客もいる」。地元で知らない人はいないほど有名で、ホルモンだけを買っていく主婦は後を絶たない。家庭では、長ネギやニラ、うどん、切りたんぽなど、好きな具を入れて楽しんでいる。「安くて栄養満点、料理も簡単だからね」
注文は全国から
直営店は、鹿角市内の2店と、大館、仙台、盛岡の計5店舗。ホルモンを卸す店は30店近くにのぼる。通信販売による全国販売も行い、ファクスによる注文が全国各地から入る。700㌘1100円から発送している。1週間にさばく量は数百㌧に及び、07年売上額は約3億円、社員は約70人。
1941年兵庫県生まれ。叔母を頼り、家族が秋田県に疎開してきた。県立花輪高校を出てから、法政大学経済学部卒業。3年間、大阪の部品メーカーに勤務後、地元に戻った。
「アボジ(孫点石さん)が自転車屋をやっていたが、立ち退きの代替地として現在の本店に移転した。ここは一杯飲み屋しかできない場所で、57年からオモニ(金順伊さん)がホルモン鍋を始めた。近くに、今は閉山した尾去沢(おさりざわ)鉱山があり、当時は同胞も多く、店は鉱夫らでにぎわった」
頭の回転が早かったというオモニは20年ほど前に亡くなったが、ホルモン鍋のスタイルや味はオモニが開発したものを基本的に踏襲している。
「仕入れ先との長いつきあいからホルモンは安く入手できるので、価格は原価ぎりぎりに抑えている。値段の安さもさることながら、オモニの味を求めて来る客が今も絶えない」と、オモニの人気の根強さを今さらながら実感している。
最近は、「ホルモンにはコラーゲンが多く、美容にいいと聞いてか、若い人にも人気だ。また、生ビールとの相性もいい」。
本店と大館店の店長は、長女と長男が担うなど、家族全員で店頭に立つ。1世が残したホルモン文化を3代にわたって守り続ける。
◆ホルモン幸楽=秋田県鹿角市花輪字堰向5(℡0186・23・3736)
(2009.5.13 民団新聞)