掲載日 : [2009-06-03] 照会数 : 8509
フラッシュ同胞企業人<37>世界に誇る高速走行用
[ 1956年大阪生まれ。近畿大学経済学部卒。97年シンコー(株)の社長に就任。1男2女。 ]
2輪車用のタイヤとチューブ製造
シンコーの金良明社長
手軽な市民の足として愛用されている自転車。1995年の阪神淡路大震災の時には、交通手段として大活躍した。近年はエコブームの影響もあって、健康維持やスポーツ、ファッションとしても利用されている。そのタイヤ・チューブを主に製造する。
練りゴムと鋼線を組み合わせたビードワイヤー(タイヤの外端部)、繊維を組み合わせたタイヤコード(タイヤの裏側)、ゴムを組み合わせたトレッドゴム(タイヤの表面)、この3過程を経て成型(型に流し込む)し、加硫(焼く)して出来上がった製品を綿密に検査、出荷までの複雑な工程を一貫生産で行う。
原材料の種類・配合が重要なだけに、「どんな条件下でも、最高水準の製品を提供することを考え、常に顧客の立ち場からものづくりをめざしている」。
父に鍛えられて
1939年、父親の基碩さんが韓国から仕事を求めて渡日。福岡から広島、四国を経て大阪にたどり着いた。当時、ゴムと言えば軍事物資のひとつとして貴重なもの。「これはいける」と考えた基碩さんは、拾ってきた自転車タイヤの生成に試行錯誤した末、47年、大阪市西成区に新興護謨工業(株)を設立した。
「当時は、韓国人というだけでどの銀行もカネを貸してくれなかったが、大手の支店長が快諾してくれた。父は『その恩を忘れず、不義理をするな』が口癖だった。今も取引を続けている」
48年に日本ゴム工業会、精錬工業会、50年に日本自転車タイヤ工業組合にそれぞれ入会。現在の八尾市に移転したのが58年。社名も、親しみやすいカタカナの「シンコー」に変更した。
59年には通産省から日本工業規格(JIS)指定工場として許可を得た。現在の社員は、本社(八尾市)と九州・宮崎工場、慶尚南道の晋州市、中国遼寧省・錦州市の計1010人。
宮崎工場は各種工業用品のほかクローラーベルト、いわゆる建設機械のキャタピラ(ゴムクローラー)、韓国は産業車両用タイヤや自動2輪車用ラジアルタイヤ、中国は自転車用タイヤ・チューブをそれぞれ生産販売している。特に、韓国で生産する2輪用ラジアルタイヤは、高速走行時の快適性や制動性、耐摩耗性に優れ、世界に認められている。
売上100億円達成
5年前に他界した父親からは「シンコーの後継ぎ」と言われ続け、厳しく育てられた。「自転車タイヤの製造は、数百円の世界。『誠実にコツコツと堅実に』が父のモットーだった。牛のようにゆっくりと、着実に目標に向かって事業を進めてきたから、今日がある」と感謝する。
父親を目標にしてきただけに、「数年前、売上高100億円を達成した時は感無量だった」。
創業当時、全国に300社ほどあった同業者は年々減少し続け、今では3社のみ。「最高の品質・独創性・誠実さ」の3本柱を原動力に、より良い製品づくりをめざす。「在日同胞として唯一の工場。その灯を消さないようにしたい」
◆シンコー(株)=大阪府八尾市竹渕東3‐147(℡06・6709・6661)
(2009.6.3 民団新聞)