掲載日 : [2009-06-17] 照会数 : 9383
フラッシュ同胞企業人<38> ゴミの山こそ「宝の山」
[ 1969年兵庫県相生市生まれ。甲南大学経済学部卒。07年(株)イボキン社長就任。娘3人。 ]
総合リサイクル業
イボキンの金在錫社長
技術力、ノウハウ、社員の質を高め、日本を代表する総合リサイクル企業を目指す−−毎朝、社員全員で唱和する会社憲法の一部だ。「リサイクルナンバーワン宣言! を掲げ、貴重な都市資源の有効活用こそ当社の使命と考えている」
事業の柱は大きく4つ。産業廃棄物(産廃)を処理する環境事業部、鉄と非鉄を選別する金属リサイクル事業部、熟練の技術を要する解体工事部、そして車両を解体・再生する自動車リサイクル事業部だ。さらに、安全に収集運搬する運輸部と、産廃を自社責任で徹底管理する最終処分場を有する。
業績10年で10倍
「すべての工程をワンストップサービスで完結できる」と、徹底した資源リサイクルに取り組む。社員は約130人、昨年の売上額は79億円。
祖父が1949年にスクラップ業高橋商店を創業。73年、3男の父親(勇さん)が独立し、揖保川(いぼかわ)工場を設立。「幼いころ、父がガレージみたいなところで黙々とモーターの解体をしていたのを覚えている」。80年に揖保川金属、03年にイボキンにそれぞれ社名変更した。
大学卒業後、鉄鋼関連の商社勤務を経て、29歳のときに入社。「当時の売上高は7〜8億円だった」。それをこの10年間で10倍にした。
転機となったのが鉄価格の暴落。「鉄も産廃の一部とみなし、スクラップだけでなくゴミにも取り組もう」と考え、多角化に乗り出した。それまでの個人商店を組織的に業務改善するためのシステム導入を計画。99年、本社工場および最終処分場についてISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得した。
「計画・実行・評価・改善というPDCAのプロセスを順に実施。事業を4部門に分け、全体にこの考え方を浸透させた」。一人ひとりに部署ごとの目標を立てさせ、毎月、部門ごとの決算を出させた。「全員一丸となって協力してくれたのがうれしかった」
同時に推進したのが、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の「5S運動」。それまで乱雑だった工場内が見違えるほどに変わった。
研修で誇り育む
常々考えているのが、「自分たちの仕事にどうすれば誇りを持てるか」だ。「意識改革が必要」と考え、教育に力を注ぐ。社内勉強会、年6回の合宿研修、そして社内試験の実施。希望者にはあらゆる資格を取得する機会を提供する。昨年は、ドイツの環境技術展に10人を視察に行かせたほか、6人を選抜して野村総合研究所による特別研修を受講させた。1年間の研修費だけで数千万円にのぼった。
「ゴミの山からリサイクルされたものが原料・素材として役立つ。資源の少ない日本で、自分たちの仕事がいかに社会貢献しているか、いつも言い聞かせている」と強調する。この不況下でも、売上額は落ちても、利益率が向上した。多角化を推進してきた成果の表れだ。
「この仕事が好きだ。ゴミの山を片づけて整地したのを見るにつけ、感動を覚える」からだ。原点は「もったいない精神」。父親から徹底してしこまれた。「この精神を広めたい」
◆(株)イボキン=兵庫県たつの市揖保川町正條379(℡0791・72・3531)
(2009.6.17 民団新聞)