掲載日 : [2017-05-31] 照会数 : 8526
<ヘイトスピーチ>対策条例の制定を…民団人権擁護委
[ <ヘイトスピーチ>対策条例の制定を ]
自治体との交渉法学ぶ
民団中央本部の人権擁護委員会は23日、東京・港区の韓国中央会館で「ヘイトスピーチ対策条例学習会」を開催した。これは条例制定に向けた基本方針を確認するとともに自治体交渉の方法を学ぶ目的で設定された。当日は、人権擁護委員のほかに条例制定を目標とする重点地方本部の東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、京都、広島、福岡の事務局長、および婦人会と青年会の役員ら44人が参加した。
「1年スパンで取り組め」
李根委員長は冒頭のあいさつで「地方の意見書採択に比して、条例制定は容易ではないが、それを踏まえた上で、改めてヘイトスピーチ根絶に向けた実務的な活動要領をともに学ぼう」と呼び掛けた。
学習会では最初に「ヘイトスピーチ対策法を補完する地方条例制定の意義と各地での取り組み」と題した講義があり、民団や市民団体と緊密に連携しながら、対策法成立に向けて最も中心的な活躍をした師岡康子弁護士が受け持った。
師岡弁護士は講義の中で、意義と法的根拠について丁寧に解説した後、対策法の成立以前に制定された大阪市と現在、活発な動きのある川崎市、京都府、名古屋市などに関する情報を提供した。
その後、民団中央本部の任泰洙副団長の激励辞に続き、在日韓国人法曹フォーラム所属の弁護士でもある趙學植委員自らが原案を作った「民団条例案」に関する説明が行われた。同条例案は全5章・23条で構成され、罰則条項が含まれている。
質疑応答ではインターネット上の差別表現について、事業者が自主的に制限するための行政支援に関する条文に意見が集中したことから、最も根絶の難しい部分であることが改めて浮き彫りとなった。
次に、青年会中央本部と東京本部が5月から取り組んでいる東京都と特別区に対する「公共施設の使用許可条件に対策法に則った適切な措置を求める要望活動」の中間報告を行った。
最後に元北海道議会議員である公明党の稲津久衆議院議員を招き、「自治体交渉の基本と留意点」に関する講義を受けた。稲津議員は「条例制定はどうしても時間がかかるものであり、年4回開かれる地方議会を見渡し、最低でも1年のスパンで計画するのが望ましい」と説明。また、有識者による研究会が設置されたり、パブリックコメントを実施する日程も想定する必要があると述べた。
続けて、「要望方法には議員、委員会、議会または首長に提出する4つの方法があり、一般的には議員に提出する請願が有効だが、その議会のローカルルールや会派構成などによりケースバイケースである」と補足。その上で首長や議員の力も影響するとし、同じ内容の条例が提出先の違いで要した期間が違った2県の実例を示した。
最後に孫成吉生活局長による行動提起と薛幸夫副委員長の閉会辞で学習会を締めくくった。
(2017.5.31 民団新聞)