掲載日 : [2008-02-20] 照会数 : 9528
2・8資料室開設へ 在日韓国YMCA
[ 2・8宣言発表当時のYMCA会館(在日本朝鮮基督教青年会館)。当時は千代田区西小川町2‐5(現在の西神田3‐5)にあった。関東大震災で消失し、現在のYMCA会館が建てられた。(写真提供、在日韓国YMCA) ]
[ 館内に展示された独立運動の若き志士の写真 ]
「共生」の源流 89年前までたどる
韓国の抗日独立運動史上に輝かしい足跡を印した1919年の2・8独立運動の記憶を呼び覚ます「2・8独立宣言記念資料室」が近く、2・8独立宣言ゆかりの在日韓国YMCA(李鍾善理事長、東京・千代田区猿楽町)にオープンする。資料室には2・8独立宣言に関する公文書類、写真、書籍などを可能な限り収集して、展示する。
日本人支援者にも光
これは06年4月に創立100周年を迎えた在日韓国YMCAによる一連の記念事業のひとつ。早ければ今年4月のオープンをめざす。
資料室では当時の留学生による決死の独立運動を紹介する一方、留学生たちの独立運動に理解を示し、支援を惜しまなかった吉野作造、新渡戸稲造、布施辰治といった人たちにもスポットをあてる。敵国の首都で逮捕された留学生たちが極刑を免れ、最高でも禁固9カ月(出版法違反)という微罪で済んだのは、こうしたよき理解者の存在が大きい。今日よく使う「共生」の源流が当時すでにあったのだ。
主な展示物は独立宣言文に署名した11人の写真パネル、韓国の独立記念館所蔵の資料、日本の公安が保管している公文書のコピーなど。開設資金1500万円の多くは国家報勲処を通じて韓国政府の支援を仰いだ。企画責任者のYMCA総務、金秀男さん(59)は「若い研究者たちの出会いと学びの場にしていく。民団の在日韓人歴史資料館や新宿の高麗博物館とも結び、修学旅行で東京を訪れる学生たちを誘致することで歴史意識を啓発する場ともしていきたい」と意気込んでいる。
資料室にあてられるのは在日韓国YMCA会館の10階で、「2・8記念国際ホール」のための同時通訳室が置かれていたところ。今春のオープンを前にした8日、韓国から国家報勲処と光復会からも関係者が出席して懸板式が行われ、駐日大使館から柳明桓大使、民団中央本部を代表して韓在銀副団長が出席した。
教育映画も制作中
在日韓国YMCAでは資料室と併せ、2・8独立運動をテーマにした教育映画の制作も準備している。監督は、川崎市桜本に暮らす在日で、独り暮らしのおばあちゃんたちの日々を描いた「花はんめ」で注目を集めている金聖雄さん(44)。
上映時間は30分余りの予定で、2・8独立運動の大まかな内容を知ることのできる教育教材的な内容となる見込みだ。現在、シナリオを制作中。来年の2・8独立宣言90周年式典での上映をめざしている。
金さんは「過去のできごととして扱うのではなく、今とどうつながっているのかを描きたい」と話している。
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2・8独立宣言
1919年2月8日、留学生約400人が在日朝鮮基督教青年会館(現在の在日韓国YMCAの前身)に集まり、「正義と自由のため世界万邦の解放を宣言する」と叫んだ。集会を解散させようとする警察と留学生の争いで会館は修羅場と化し、20人余りが逮捕された。
決起の前日には一人の留学生が綿の布に書かれた「独立宣言書」を学生服に縫いつけてソウルの崔麟のもとに届けた。命をかけた敵国の首都での義挙は3・1独立運動につながった。
(2008.2.20 民団新聞)