「こんな所にまで」
前震は逃れたが 一人暮らしの姜英子さん(熊本市中央区本山町)の場合、14日の前震では家財が散乱しただけ。16日の本震で外壁が崩れた。余震を避けるため同じ町に住む妹と乳児を抱きながら車で福岡に避難した。
美容室を営む金恵淑さん(60・合志市須屋)は日本人の夫(73)と2人暮らし。タンスなど家財が倒れたものの家は無事。余震の不安を抱きながらもガス、水道が復旧したため自宅で就寝している。美容院も19日から営業を再開したが「こんな時ですから、お得意さんさえ来店を控えているみたい」と話す。
休店するしか… LPガス店を営む許勉さん(68・熊本市中央区保田窪)は夫人と2人暮らし。屋根瓦が落ち、家屋に亀裂が数カ所入り、車中泊を続けた。隣家との石垣塀も崩れかかっている。19日に水道が復旧して自宅に戻ったが、店舗は休店状態。近くに住む3人の息子たちと避難所を行ったり来たりだ。
湧き水でしのぐ 金達龍さん(78・熊本市北区清水新地)は夫人の白永子さん(75)と息子の3人暮らし。家財が散乱し食器が飛び散ったが家屋は無事だったため避難せずに自宅で寝ている。水道は断水したが、溜めてあった湧き水でしのいだ。
朴誠吉さん(53・熊本市東区長嶺東)は夫人、2人の子と4人暮らし。自宅は屋根瓦が崩れ落ち、内壁、外壁ともに剥がれ落ちた。ライフラインは復旧したが、現在も避難所と自宅で交互に寝ている。
余震のたび避難 朴汰燮さん(64・熊本市中央区南熊本)は夫人と2人暮らし。アパート2棟を持つが、いずれも天井板が崩れ落ち支柱のコンクリートもはがれた。配管が破裂し水漏れが続き修理を急いでいる。アパートの1階が自宅で、余震のたびに外に避難した。
車中泊繰り返す 李正徳さん(56・熊本市中央区)宅は屋根瓦が崩れ落ち内壁にヒビが入った。夫人、娘、母親(89)と同居。強い余震が続く間、日中は自宅、夜は車中泊を繰り返した。夫人の鄭恵貞さんは義母の介護に努めながら、同じく本国から嫁いできた仲間とラインやカカオトークを活用し安否確認や生活必需品の入手情報を交換している。
金龍浩さん(87・熊本市中央区本荘町)は夫人と2人暮らしだが、息子夫妻が隣に暮らす。市内の中心部で婦人服店を営んでいるが、2階の在庫置き場が散乱し休店。21日の降雨で雨漏りしたため、途方にくれている。
金達龍さん(92)は熊本市西区で一人暮らしだ。20日に車中泊から自宅(市営住宅5階)に戻ったが、恐くて座布団を敷いて寝る毎日だった。急いで逃げられるからだ。本震では落ちてきた壁掛け時計が頭に当たりこぶができた。5年前に圧迫骨折したために歩行の負担が大きい。子ども7人に孫、ひ孫、玄孫合わせて40人以上。「怖いが家族や周囲のおかげで生かされて感謝している」。
見舞金有り難い 張弐順さん(78・阿蘇郡南阿蘇村)も夫と娘が他界し一人暮らしだ。名古屋に住む息子が帰ってくると言ってくれたが、余震が続き危ないので来るなと言った。避難所は人があふれ、息がつまるので車の中で寝ている。水は21日からチョロチョロ出始めたが、時々断水する。役所に行くと、レトルトひじきご飯を2つくれた。足が悪く歩行が不便だ。「民団の見舞金が有り難い。わざわざ来てくれて本当に感謝する」
金福徳さん(阿蘇郡南阿蘇村)は余震が収まった21日から水道が出始めたことで避難所から家に戻った。久しぶりに洗濯ができたが、食料は調達できず数日間、家の残りものでしのいだ。その日、福岡本部の李相鎬団長と中央の白秀男副局長が訪れ救援物資と見舞金を届けた。「こんな遠い所まで来てくれて本当にうれしい。民団に感謝したい」。
■□
朴大統領が見舞い電
企業も相次ぎ救援物資 朴槿恵大統領は18日、安倍晋三首相に「多くの人命と財産の被害が発生したことに哀悼の意を表明するとともに、早期の事態収拾を望む」と見舞いの電報を送り、韓国政府として支援する意向を伝えた。22日には韓国空軍輸送機2機で飲料水や食料などの救援物資を熊本空港に運んだ。
菅義偉官房長官は「日韓関係の観点からも有意義なもの。心温まる支援に感謝したい」と述べた。
民間企業ではアシアナ航空が19日、義捐金1億ウォンと毛布1000枚、大韓航空も20日、2万4000本の2㍑入りミネラルウォーターなどの緊急救援物資を搭載し仁川から福岡に運んだ。
民団県本部にも 農心ジャパンからは2㍑入りのミネラルウォーター900本と辛ラーメンなどのカップ麺4800個が23日、民団熊本本部に届いた。
24日にはポスコ(浦項製鉄)JWPCも飲料水をはじめ、ウエットティッシュ、成人用オムツ、毛布などを福岡本社から金宗烈社長と社員らがトラックで民団県本部に運んだ。
|
倒壊した益城町のキムチ工場 |
|
前震、本震に続き数度にわたる余震で塀が倒壊し、外壁も崩れた同胞宅(熊本市中央区) |
|
朴鎭雄福岡総領事(中央右)も救援物資を手に民団熊本本部を訪れた |
|
民団の救援チームに団員以外の新定住者仲間の連絡先を知らせる鄭恵貞さん(右) |
|
同胞が営むパチンコチェーン店も大きな被害に見舞われた(益城町) |
|
天井が崩れ落ち、家財が散乱して足の踏み場もない同胞宅(熊本市中央区) |
|
カップ麺など各地から寄せられた救援物資を仕分けする民団の救援チーム |
|
救援物資運搬車両の多くは熊本在住新定住者のオモニたちが提供した |
|
福岡からトラックで民団熊本本部に救援物資を運んできたポスコJWPCの関係者(会館の外壁には亀裂が走り「危険」の張り紙が) |
|
民団からの見舞金を受け取ると団員らは「ありがとう」を連発した |
(2016.4.27 民団新聞)