掲載日 : [2017-11-29] 照会数 : 5418
韓国テンプルステイ<18>白厳山 白羊寺
5千本もの樹林帯に感じる歴史
光州に近い長城(全羅南道)からバスで40分ほど行くと白羊寺入口に着く。渓流に沿いながら進むと10分で一柱門が見えた。非常に太い柱のどっしりとした重量感。見るからにたくましい。
少し先にはキャンプ場(野営場)があり、広々とした空間がここちよい。大きな石柱がたち、「白巌山古佛叢林白羊寺」と記されている。そこから望んだ岩山の白巌山がダイナミックに迫ってくる。鮮やかな紅葉の美しさで知られ、訪れる人が後を絶たない。
寺院の入口にはきまって舎利をおさめた浮屠がみられ、連綿として師の法を受け継いできたことがわかる。
境内につづく道の両側に並ぶ樹齢700年を超すヒノキやナラの一群は約5000本。天然記念物に指定され、時おり、リスが飛ぶように過ぎ去っていく。本堂である大雄殿のうしろに広がる白鶴峰の景観も秀逸だ。
宗務所隣のテンプルステイ事務所で受付をすませてから、9カ所ある庵のうち近くの天真庵に出かけた。大雄殿や供養間(食堂)があり、予想のほか規模が大きい。坂道をドングリの実が転がっていくさまがおもしろく、リスにとって食べ物にこと欠くことはなさそうだ。
632年、如幻僧侶が白巌寺の名称で創建した。その後、浄土寺などに変更されたが、19世紀後半、現在の白羊寺に変わった。山からおりてきた白い羊が読経を聞いて戻ったことに由来するといわれる。
禅院、講院、律院を備えた総合修行道場で、古仏叢林と称する。雲門庵の雲門禅院に代表されるとおり、昔から禅寺としての名声が高く、有名な禅師を輩出した。
夕食時の食堂に珍客がいた。3人の修道女が食事をとっていたのだ。教会関係者とはときどき交流があるらしい。教会の一部に反対する声があるようだが、異なる宗教人同士の交流は歓迎すべきことではないだろうか。
夕方の礼拝は19時と一般的な時間帯だが、朝は5時から。他の寺に比べて1時間半ほど遅く始まるため、近隣の人にとってはありがたい。そのためクルマで参加する人が少なくない。法堂は参拝者であふれ、最後に15分ほどの座禅で締めくくられるので、気分がスッキリとしてすがすがしい。
続いての朝食には全員が参加した。僧侶も同席しての食事はめずらしい。このように信徒らと自然にまじわる機会を提供することは喜ばしい。ここには精進料理に詳しいチョン・グワン尼僧がおり、ナムル(野菜)料理の味は格別だった。
井邑市と淳昌郡、長城郡にまたがる内蔵山国立公園は「湖南の金剛山」と呼ばれる。主峰の神仙峰をはじめ9つの峰に囲まれ、僧侶が修行前に斎戒沐浴したといわれる「金仙の滝」は水量が多く壮観だ。
◇全羅南道長城郡北下面白羊路1116(TEL8261‐392‐0434)
浮屠(ふと) 高僧の舎利を祀った塔で、一般に寺院の入口に見られる。八角堂形や円形などがあり、高僧の行跡を記した碑石を一緒にたてることもある。高僧を偲ぶとともに、僧侶や信徒が範として精進せよとの意味が込められている。
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.11.29 民団新聞)