掲載日 : [2018-02-14] 照会数 : 5860
訪ねてみたい韓国の駅<23>KTX京江線 珍富
[ 集落南の山の麓に建設された珍富駅。「五台山」という副駅名を持つ ] [ 世界の注目が集るアルペンシアジャンプ競技場(写真は2017年プレ五輪大会のもの) ]
スキー競技と観光の玄関口
いよいよ平昌オリンピックが開幕した。この週末は、人気種目の1つである、スキージャンプ・ラージヒル個人が開催される。その会場となるアルペンシアジャンプ競技場の最寄り駅。それが、KTX京江線珍富駅だ。前回紹介した江陵駅の手前にあり、2017年12月22日に開業した。
珍富駅は、人口9000人の珍富面の郊外に位置している。オリンピックのスキー競技会場となるアルペンシアリゾートや龍平リゾートからは直線距離で10キロほど離れており、駅と競技会場はシャトルバスが連絡している。少々不便だが、会場は太白山脈随一の峠、大関嶺に抱かれており、高速鉄道は総延長21・7キロの大関嶺トンネルで貫いているのだから、やむを得ない。
売店と待合室、きっぷ売り場を兼ねた顧客支援室が並ぶコンパクトな駅舎から外に出ると、強烈な冷気に襲われた。1月23日、この日の気温はマイナス19度。肌の水分が瞬間的に凍結し、顔がチクチクと痛む。江原道の冬の寒さは厳しいが、今年は特に冷え込んでいるようだ。
駅前には、バス乗り場のほかは何もない。時刻表によれば、競技会場やバスターミナルへのシャトルバスのほか、月精寺や、アリランの里・旌善へのバスも運行されている。月精寺は、643年、新羅の善徳女王時代に建てられた仏教寺院で、国宝第48号の八角九層石塔があることなどで知られる。僧侶の修行を1泊2日で手軽に体験できるテンプルステイプログラムも人気だ。ペ・ヨンジュンが著書を執筆する際に滞在したこともあり、韓流ファンにも人気のスポットである。月精寺周辺には、珍富駅の副駅名にもなっている五台山国立公園が広がっており、暖かい時期ならハイキングや登山も楽しめる。珍富駅を拠点に、文化遺産や自然を楽しむ旅も良い。
厳しい寒さに耐えながら歩道を歩き、五台川を渡ると、珍富面の集落に入った。高速道路インターの入口横に、真新しいコンビニエンスストアがあり、暖を求めて中へ。レジ横に、日本でもすっかりお馴染みになったレギュラーコーヒーのベンダーがあった。店内のベンチに座り、温かいコーヒーを飲みながら、アルペンシアに集う選手たちに思いを巡らせた。
筆者は、学生時代からのスキージャンプファン。日本選手と同時に、韓国代表チームも応援している。
きっかけは、今から20年前の長野オリンピックだ。初めてスキージャンプ競技に出場した韓国選手に興味を持った筆者は、韓国唯一のジャンプ台があるという全羅北道のスキー場に英語でメールを送った。半年ほどして、飛形審判員のムン・チョンソン氏から返事が届き、以来交流が始まったのである。当時の韓国におけるスキージャンプの競技人口は、わずか6人。それでもワールドカップのポイントを獲得していた。彼らの地道な努力は、2003年青森冬季アジア大会での団体戦金メダル獲得として実を結び、2009年には彼らをモデルにした映画「国家代表!?」が大ヒットを記録した。
平昌オリンピックのスキージャンプ個人ラージヒルは、17日に決勝を迎える。長野オリンピックから6大会連続出場となるキム・ヒョンギら韓国選手も出場する予定だ。当日は、この珍富駅も、世界中のスキージャンプファンで賑わうに違いない。
栗原景(フォトライター)
(2018.2.14 民団新聞)