掲載日 : [2018-06-13] 照会数 : 6853
時のかがみ…「韓日〝ドリーム番組〟」 桑畑優香(ライター・翻訳家)
[ 昨年11月のイベントで「PRODUCE48」プロジェクトを発表した秋元康氏 © CJ E&M Corporation,all rights reserved ]
AKB48とKPOPアイドル、歌とダンスを競う
世界中から注目を浴びている韓国のKPOPと日本を代表するアイドルAKB48のメンバーが結集し、ドリームチームを作る。そんなテレビ番組がいま、まさに始まろうとしている。
番組名は、「PRODUCE48」。韓国の様々な芸能事務所に所属するデビュー前の練習生とAKBの計96人が個別に歌やダンスで対決する、韓国のケーブルテレビ局Mnetで放送されるオーディションプログラムだ。最終的に生き残ったメンバーで、韓日合同グループが結成される。「PRODUCE101」というタイトルで練習生が競う姿が話題を呼び、韓国で社会現象になった国民的番組の続編である。
「国民プロデューサー」と呼ばれる一般視聴者たちがネットを通じて投票し、勝敗を決めるサバイバル形式。すでに内部選考は始まっていて、5月10日には歌番組「M CONNTDOWN」の中で、テーマソング「ネッコヤ(PICK ME)」を全員で歌う姿を放送。HKT48の宮脇咲良がセンターを務め、注目を集めた。歌詞は1番が韓国語、2番が日本語だ。
このプロジェクトが発表されたのは、昨年11月に横浜アリーナで開催された「Mnet Asian Music Awards」でのことだった。AKB48の歌に続いてプロデューサーの秋元康氏が登場すると、突然大スクリーンに「PRODUCE48」「COMING SOON」という文字が。一体何の発表なのか会場がざわつく中、説明もなくイベントは終了。以後、詳細をメディアに明かすことなく、秘密裏に準備は進められてきた。そして、いきなり5月10日にテーマソングのお披露目となったというわけだ(だが、その時もプロジェクトの具体的な内容については、一切発表されなかった)。
謎めいた演出が好奇心をかき立てるPRODUCE48。このプロジェクトが画期的な理由は、韓国で日本の歌手が普通にテレビに出る道を開いたということだろう。韓国のテレビ、特に地上波は日本の歌手が歌うことを自主規制のように控えている。理由について「国民感情を配慮している。特にAKBやジャニーズのような人気者が出たら、影響力が予測できず難しい」と韓国の放送関係者。そんな中、地上波よりも表現に制限が少ないケーブルテレビの特性を生かし、韓日の音楽シーンに風穴を開けようとしているのが、Mnet率いるPRODUCE48だ。
SNSでは「KPOPとAKBのファン層は違う」という日本人の声も。韓国でも「国民的番組に日本人が出るのは不快」という人がいる一方で、AKBファンは「韓国のテレビで大好きな子を見ることができてうれしい」と賛否両論だ。だが、本プロジェクトでもうひとつ重要なのは、ネット配信されることで、韓日のみならず世界に進出できる可能性をはらんでいるということだ。
番組は6月15日、韓日同時放送でベールを脱ぐ。
くわはた ゆか
ライター・翻訳家。94年「101回目のプロポーズ」のリメイク版を見て、似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。ソウル大学政治学科で学ぶ。帰国後「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。『現代ビジネス』『AERA』などに執筆。訳書に『花ばぁば』(ころから)、共著に『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)ほか。
(2018.06.13 民団新聞)