掲載日 : [2019-12-25] 照会数 : 7269
時のかがみ「 第3次韓流ブーム」 桑畑 優香(ライター・翻訳家)
[ 3年連続NHK紅白歌合戦に出場するTWICE。12月に名古屋で開催された「2019 Mnet Asian Music Awards(MAMA)」でも大きな歓声を浴びた。 ©CJ ENM CO.,Ltd,All Right Reserved ]
定着するのか… 2020は節目の年に
「Y子ね、最近は新大久保に行かなくなったの」
小さな異変を感じたのは、今年の夏のこと。Y子ちゃんのママの言葉がきっかけだった。現在高校生の娘が幼稚園の時のご縁で、1年に数回ご飯を食べるママ友。昨年会った時は、「Y子が急に韓国エンタメにハマって、友だちと新大久保に通っているの」と言っていたのに。
ここ数年、「日韓関係は最悪」といわれる中、10代、20代の若者を中心に興隆した「第3次韓流ブーム」は今、どうやら過渡期を迎えつつあるようだ。
2019年は、韓国エンタメ業界にとって激動の一年だった。上半期には、ソウル・江南にあるクラブでの暴行事件を発端とする「バーニング・サン事件」に関連し、BIGBANGのV.Iが芸能界から引退を表明。人気ロックバンドFTISLANDのチェ・ジョンフンもグループ脱退と芸能界引退を明らかにした。
JYJのメンバーで元東方神起のユチョンも、薬物使用の影響で所属事務所が契約を解除。下半期には、女性アイドルグループf(X)の元メンバーソルリやKARA元メンバーク・ハラが自ら命を絶つなど、2010年前後の「第2次韓流ブーム」をけん引したメンバーたちが、次々と表舞台から姿を消した。
また、秋には本欄でも紹介した日韓合同グループIZ*ONEを誕生させたPRODUCE48をはじめ、日韓のエンタメファンを熱狂させた視聴者参加型のオーディション番組「PRODUCE101」シリーズが、製作サイドで投票操作されていたことが発覚。IZ*ONEは12月23日現在、今後の活動の見通しが立たないままとなっている。
夏ごろから日韓の政治関係が、さらに悪化。日本のメディアでは「それでも若者世代の間で韓国ブームは続いている」という論調を散見するが、実は個人的な肌感覚では、もしかするとピークは過ぎてしまったのでは?と感じているのが本音である。
例えば、あるK‐POPグループのファンの女性から聞いた「職場では韓国が好きと言いにくくなった」という言葉や、「SNSで韓国について書きにくくなった」と若い女の子が胸の内をこっそり教えたくれたこと。今年前半までは存在しなかった、そんな小さな声の数々が、私の心をざわつかせるのだ。
一方で、BTSこと防弾少年団は、日本初のスタジアムツアーで、計21万人を動員。TWICEは、韓国のガールズグループとして初となるドームツアーを成功裏に終えた。BLACKPINKも東京ドームでコンサートを開催。一部の「勝ち組」は、さらに市場を広げているのも現実だ。
韓国ブームといえば、もう一つの要素がコスメやファッションの流行だが、業界では「トレンドは3年周期で変わる」という説もある。第3次韓流ブームが始まったと言われてから、来年でほぼ3年。新たな起爆剤があるのか、サブカルチャーとして定着するのか。2020年は、節目の年となる予感がする。
(2019.12.25 民団新聞)