掲載日 : [2021-01-27] 照会数 : 6150
「違い認めあい尊重しあう」…異文化に触れる大久保図書館
[ 一般向け多文化図書コーナーと米田雅朗館長 ]
外国語資料絵本中心に31言語2542冊
東京の新宿区立大久保図書館は外国語の資料だけでも31言語2542冊(2020年6月現在)を取りそろえ、区内の公立図書館のなかで異彩を放っている。「大久保図書館から学ぼう」と関係者が各地から見学に訪れているほど。地元大久保1、2丁目は全住民の35%を外国人が占める。こうした多国籍タウンにふさわしい図書館といえよう。
大久保図書館はJR大久保と並ぶ「コリアンタウン」の玄関口、都営地下鉄大江戸線東新宿駅から徒歩5分。フロア面積730平方㍍。中央図書館を含め11を数える新宿区立図書館のなかでは中程度の規模ながら、「多文化図書」のコーナーは絵本(児童書)を中心に充実している。
言語としては全体の半数以上を占める韓国・中国は別格としてネパール、ベトナム、ミャンマー、タイ、タガログ、インドネシア、マレーシア、シンハラと多彩。図書館が選び購入したのと併せ、住民からの善意の寄贈も増えていったのだ。
独自の取り組みとして日本人と外国人各5人がそれぞれイチオシの本をプレゼンテーションする「ビブリオバトル・インターナショナル・オオクボ」(知的書評合戦)も行っている。最後に参加者全員の投票で「チャンプ本」が決まる。
多言語の取り組みが本格的に始まったのは、図書館運営を民間に委託した2010年から。共同事業体として「指定管理」を受けた紀伊國屋書店と図書館関連事業を担う「ヴィアックス」が外国人住民が急増しつつあった地域の特色を生かし、国際友好・相互理解を重点的に推進していった。
同図書館は国籍不問。キャッチコピーは「お国はどちらですか?」「地球です」。米田雅朗館長によれば「外国の人が来てほっとできる、安心できる、居場所になるようなそういう図書館を理念として掲げている」。具体的には「国境・人種を乗り超え、違いを認めあい、尊重しあう。誰も置き去りにしない」ということだ。
米田館長が「自分の原点」と明かしてくれたのは12年に体験したタガログ語の「おはなし会」。担当したフィリピン国籍の少年(18=当時)は引っ込み思案で、なにか話しかけても終始うつむいてばかり。
心配していた読み聞かせは終わった。米田館長が「よかったね」と声をかけると、あたかもサッカーで決勝ゴールを決めたかのように喜びを爆発させた。日本語で苦労してきた少年がみんなの前でタガログ語を披露し、自信を取り戻したのだ。
米田館長は母語でふれることがいかに大事なことかをこの時、痛感したという。「外国人にとっては母語に触れる、日本人にとっては異文化に触れる機会になれば」と話している。
新宿区大久保2‐12‐7(2階)、火曜日休館。TEL03・3209・3812。
(2021.01.27 民団新聞)