掲載日 : [2021-07-07] 照会数 : 4346
【新刊紹介】「ヘイトスピーチと対抗報道」 「人種差別基本法」制定を
「ヘイトスピーチ対策法」施行から5年。路上やネット上でのヘイトスピーチ、ヘイトクライムはやまない。この問題の背景に「官製ヘイト」と「歴史改竄主義」があると主張する。
「官製ヘイト」の代表的な事例が日本政府の高校無償化制度からの朝鮮学校排除と、対話より圧力を優先してきた日本人拉致問題だ。日本国内でのヘイトクライムにも見て見ぬふり。「国が外国人を差別する政策をとっていれば、社会に『この人たちには差別してもいいんだ』という雰囲気ができてしまう」。いわば、「上からのヘイトが下からのヘイトをあおっている」のだ。
「慰安婦」問題や徴用工問題では、日本を批判する言動が「反日」「日本ヘイト」とバッシングを受ける。日本政府が「強制連行はなかった」「最終的かつ不可逆的に解決した」と被害者の尊厳を奪い続けているのは、こうした下からのヘイトにお墨付きを与えているようなものだ。
筆者は結論として「ヘイトスピーチ対策法」を発展させ、差別言動を違法とする理念を明示した包括的な「人種差別基本法」の制定と「人種差別禁止法」の必要性が望ましいと強調した。
韓日の戦後補償問題を長年追い続けた経験を生かし、ミクロとマクロ両方の視点から問題を浮き彫りにしたのが目新しい。角南圭祐著、968円。集英社新書(03・3230・6080)。
(2021.07.07 民団新聞)