掲載日 : [2021-11-26] 照会数 : 3343
在日3世フジ住宅に勝訴…大阪高裁、レイシャルハラスメント断罪
[ 大阪地方裁判所 ]
ヘイト文書の配布差し止め…賠償額も132万円に増額
【大阪】在日韓国人3世の女性が、職場内で人種差別的内容を含んだヘイト文書の配布を受けるなど日常的にレイシャルハラスメントにさらされたとして勤務先の東証1部上場企業「フジ住宅」(大阪府岸和田市)に計3300万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が18日、大阪高裁であった。清水響裁判長は文書配布の差し止めを命じるとともに、賠償額も1審の110万円から132万円に増額した。
女性は2002年からパート社員として勤務。「パートにも福利厚生の行き届いた働きやすい職場」は親会社に吸収されてから激変した。
会長は韓国や中国出身者らを「うそつき」「野生動物」などと侮辱したばかりか、嫌韓本などのコピーを毎日のように全従業員に配布し、読んだ感想を業務日誌などに書くよう強要した。このほかにも、「自虐史観」を攻撃する特定の中学歴史教科書を採択させるための政治活動に参加動員し、教科書展示会への参加と会場でのアンケート記入を促してきた。
これらの文書は表面上、受け取りを強制するものではなく、政治活動への参加も自由。ただし、事実上、ほぼすべての従業員が受け取っている資料を断ったり参加を拒否することは困難だった。原告女性は「意に反しても受け取っておいたほうがいいのではないか」と不要な心配をせざるをえず、業務に支障が生じていた。
地裁堺支部は20年7月、「社会的に許容できる限度を超えている」として会社側に賠償を命令。双方が控訴していた。
一方、高裁は「差別を助長する可能性がある文書を継続的かつ大量に配布した結果、現実の差別的言動を生じさせかねない温床を職場に作り出した」とし、女性の人格的利益を侵害したとの結論を出した。
また、フジ住宅が1審判決後も文書を配布し続けていることには、女性側の訴えを認め、配布を差し止める仮処分を出した。仮処分は即座に効力が生じるため、会社側は決定に応じる必要がある。
弁護団は「非常に真摯に事件を判断し、女性のの被害を正面から受けとめた。原告の完全勝訴と言っていい」と評価、フジ住宅には「裁判が生かされるよう望む」とコメントした。
女性は「会社と会長が判決をどう受け止めて、どんな対応をするのかが気にかかる。うれしいんですけど、まだ終わってはいないんだという気持ち」と、複雑な表情。フジ住宅側は上告して争う姿勢を見せている。
(2021.10.24 民団新聞)