掲載日 : [2017-08-30] 照会数 : 10630
都知事の追悼文見送り「逆メッセージにも」…市民団体が憂慮の声
『九月、東京の路上で‐1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(14年、ころから)の著者、加藤直樹さんは、小池知事の発言に「衝撃を受けた」と次のように語った。
「関東大震災は東京に住んでいる朝鮮人が都民によって殺された。流言飛語の拡散に加担したのは行政であり、都は虐殺に向き合う責任がある」「都は『このような不幸な出来事を二度と繰り返さない』という意味を込めてこれまでメッセージを送ってきたはずだ。今年から追悼文の発送をやめたということは、逆のメッセージになってしまうのではないか」
千葉県八千代市で「関東大震災と朝鮮人虐殺事件」を調査し、追悼・慰霊に取り組んできた平形千惠子さんも「追悼文は毎年、慣例的に送付してきた」との小池知事発言に「なんと無責任な言葉でしょうか。昨年の追悼の辞も心からのものではないということですね」と憤りを隠さない。
「排外主義の側に立って再び繰り返す道を歩むのか、あるいは追悼文で触れたように世代を超えて語り継いでいくのか。小池知事はその選択を間違えないで今年は心を込めた追悼の辞を出して下さい」と要請した。
小池知事は追悼文を断った理由として表向き「関東大震災で犠牲となられた全ての方々への追悼の意」を表す都慰霊協会の大法要への出席を挙げた。「関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」の矢野恭子さんは「自然災害犠牲者とジェノサイド事件の犠牲者とは別の追悼の意が表されるべきではないのか」と疑問視した。
加藤さんは、古賀都議が工藤美代子氏の著書『関東大震災 朝鮮人虐殺の真実』を引用し〞虐殺はなかった”〞殺されたのはテロリストで正当防衛だった〟とした主張を「荒唐無稽」と批判した。このことは加藤さん自ら参加する「民族差別への抗議行動・知らせ隊+チーム1923」がインターネット上で詳細に検証している(
http://01sep1923.tokyo)。
加藤さんは古賀都議に小池知事への質問を依頼したのは「在日特権を許さない市民の会(在特会)」と近い関係にある「そよ風」(「日本を愛する女性の会」)と見ている。群馬県内の「群馬の森」の朝鮮人追悼碑などを「反日碑」として撤去を自治体らに働きかけているグループだ。
加藤さんは「小池知事が追悼文を出さないことで『そよ風』は『虐殺は嘘なんだ』と言いやすくなった。ロビー活動を重ねて次は、横網町公園での追悼式典そのものをつぶしにかかるだろう。最終的に狙っているのは朝鮮人犠牲者追悼碑の撤去だ」と危機感を強めている。
(2017.08.30 民団新聞)