「日韓伝統音楽祭50」を開催
50歳未満 25人ずつが共演
横浜能楽堂は、伝統芸能分野において、日本とアジア諸国を中心とした外国との交流に力を入れて来た。中でも最も多いのが韓国との交流だ。
始まりは2000年。この年から日韓共催の「サッカーワールドカップ」が開催された2002年まで3年間にわたり、韓国の芸術総合学校世界民族舞踊研究所との共同主催で、「日韓古典芸能祭」を開催した。
この催しには、「人間国宝」の能楽大蔵流狂言方・山本東次郎さん、今年惜しくも亡くなった韓国の伝説的な舞踊家・李梅芳さんを始め、日韓を代表する舞踊家・音楽家に出演していただいた。1年目は横浜能楽堂だけでの開催だったが、2年・3年目は、ソウルにある国立国楽院でも同じプログラムで開催した。
それから15年余り。今年は「日韓国交正常化50周年」という記念すべき年に当たる。数年前から「何かやらなければ」と思い続けていた。しかし、並みの企画では50年を飾ることは出来ない。「華やかにやりたい」「でも、ただ華やかなだけでは駄目だ」「何か、これからの日韓の文化交流に意味があることでないと」…。様々な企画が、頭の中で、浮かんでは消え、浮かんでは消えしながら、遂に2014年を迎えた。
何か公演を開催するとしたら、最低1年前には決めなければ出来ない。焦っていた時、いつものように、ある日突然、天から企画が降って来た。
それが、「50」という数字をキーワードにするということだった。
ただの語呂合わせでは無い。「50」という数字に意味を持たせた。日韓両国の若いアーティストに一堂に集まってもらい、交流のきっかけを作って欲しい、という思いを込め、「50歳未満の50人」が出演する音楽祭を開催することにした。
日韓から25人ずつを選ぶ時に、まず考えたのは、伝統音楽を原点としていること。日韓交流においては、ややもすれば「未来志向」という言葉が焦点になることがあるが、本当に共に未来に向かって歩もうとすれば、まずそれぞれの伝統をお互いに理解し合うことが必要だからだ。そこにこそ、伝統音楽分野における交流の意味がある。その条件の中で、人気・実力共に、50歳未満の世代を代表する人に絞った。
さらに、ただ出演するだけでなく交流のきっかけにしてもらうのも、この企画の目的だから、コラボレーションなどを通じ、幅広い音楽ジャンルの人たちと柔軟に交流して来た人たちに、最終的に声を掛けた。
そういう条件をクリアした、元ちとせさん(島唄)、上妻宏光さん(津軽三味線)、金龍雨さん(民謡)、金保京さん(伽 琴)ら、6組ずつ、日韓合わせて50人が、11月21日、横浜みなとみらいホールに集まり、「日韓伝統音楽祭50」に出演する。NHK紅白歌合戦方式で、4時間半にわたり繰り広げられる催しだ。
元ちとせさんは、この催しの趣旨に共鳴し、メジャーデビュー以来封印して来た、原点である奄美の島唄を公の場で久しぶりに歌う。出演者は、この催しに様々な思いを込め、未来に向かって共に歩み出す。 www.friv5online.com
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「日韓伝統音楽祭50‐50年目・50歳未満の50人」
11月21日。16時開演。横浜みなとみらいホール大ホール。料金5000円。申し込みは横浜能楽堂(045・263・3055)、横浜みなとみらいホールチケットセンター(045・682・2000)。問い合わせは横浜能楽堂。
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プロフィール
中村雅之(なかむらまさゆき) 1959年北海道生まれ。法政大学大学院修士課程修了。横浜能楽堂館長。横浜市芸術文化振興財団理事、明治大学大学院講師などを兼ねる。横浜能楽堂の開館以来、日本の伝統芸能を幅広くプロデュース・演出。韓国を中心に、海外の伝統芸能の招聘・共同制作公演にも尽力。著書に『英訳付き一冊でわかる日本の古典芸能』(淡交社)など。
(2015.10.14 民団新聞)