掲載日 : [2016-02-24] 照会数 : 6443
第70回定期中央委採択「16年度基調」(要旨)
[ 16年度活動方針を決めた定期中央委員会 ]
新たな出発を期し足場固めよう
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展望
修復の流れ加速を…警戒すべき韓日離間策動
本団は今年、創立70周年記念事業を多角的に行う。これを単なる祝祭で終わらせることなく、未来づくりの足場とするために全力を傾ける。70年の歴史と中長期的な課題を共有することで、本団の存在意義を再確認し、世代を超えた連帯と次代を担う壮青年たちの参与意識が自ずと育つ一年にしたい。
しかし、意義深い今年度事業に臨むにあたり、本団を取り巻く状況が引き続き厳しいことに留意する必要がある。北韓による4回目の核実験(1月6日)は韓半島の軍事的緊張を高め、関連諸国関係を揺さぶって韓国を苦境に追いやろうとしている。
韓国の対北韓戦略は、米国との軍事同盟および日本との経済・安保両面での堅固な協力体制を基本に、中ロと実効性ある連携を築くことで成立する。だが、島嶼領有や海洋規範問題で米日と対立する中国、シリアやウクライナ問題で米欧と反目するロシアは、北韓核問題についても韓米日を牽制し続けている。
北韓は関連国間の不一致を突き、中ロの取り込みに躍起になる一方、再び「全面核戦争危機」を煽りつつ弾道ミサイル発射など軍事挑発を継続するものと見られる。国連安保理が採択する予定の新たな制裁決議、3月定例の韓米合同軍事演習、5月初めの北韓第7回党大会と続く上半期はせめぎ合いが熾烈になろう。
そうした情勢下の4月、韓国は団員をはじめとする在外国民も投票権を行使する第20代国会議員選挙を行う。対北韓政策や経済再生法案と並んで慰安婦問題の韓日合意や歴史教科書の国定化問題が主要争点になる見通しだ。このうち、慰安婦問題は韓国の対外関係や本団の立場に深刻な影響をもたらす可能性がある。
慰安婦問題の韓日合意は大きな進展であるにもかかわらず、韓国ではこの破棄を求める動きがある。これは韓日両国ばかりか、合意の仲介役を担った米国との関係まで離間させようとする策略を含んでいる。
中ロとの連携がまともに機能せず、なおかつ米日両国との結束にヒビが入れば、韓国のよって立つ基盤は弱体化する。それは事実上、北韓への利益供与となり、韓国は国際社会との信頼関係を大きく損なうことになろう。
北韓リスクが時を追って膨む事態を前に、本団は韓国の各界各層に理念相克による国力消耗を回避しつつ、国民的結束を導くよう強く促していく。韓日両政府に対しては、慰安婦問題の合意を着実に履行すべく全力を注ぎ、経済から安保まで可能な分野から協力体制を拡充するよう積極的に働きかけ、両国関係の安定化に貢献したい。
本団は13年度の基調に重点方針として掲げて以来、3年間にわたって韓日友好・共生促進運動に真摯に取り組んできた。それは草の根交流の深化に加え、目に見える成果となって表れてもいる。
朝鮮通信使資料をユネスコ世界記憶遺産に登録する韓日共同事業は、両国の団体代表による正式調印(1月29日)を終え、3月に登録申請書を提出する段階にきた。ヘイトスピーチの規制を求める地方議会の意見書の採択は昨年末現在で293件を数え、大阪市議会は全国で初めてヘイトスピーチ抑止策をまとめた条例を成立(1月15日)させるなど、レイシズムに対する包囲網は着実に形成されつつある。
本団は昨年11月の韓日首脳会談がつくった関係修復の流れを加速させる決意のもとに朝鮮通信使資料の記憶遺産登録推進など韓日友好の促進に貢献する事業を拡充する一方、ヘイトスピーチなど韓日関係の阻害要因を取り除く運動を果敢に展開する。同胞青少年が健全に成長する環境を整え、本団の存立基盤を固めることにも直結するこの運動の成否は、言うまでもなく我われ責任世代の双肩にかかっている。
本団は韓日関係のあり方に多大な影響を受けざるを得ない立場にあり、祖国・韓国とは紐帯を、居住国・日本とは共生を追求する草創期以来の基本精神を常に意識しなければならない。
韓国との紐帯を固めるには国民的な課題を共有することが前提となる。4月の国会議員選挙に日本地域有権者の積極参与を後押しするのはもちろん、韓国の国力増進と南北の平和的民主統一に貢献すべく不断の努力を重ねる。日本との共生の基本は地域社会の発展に寄与するところにあり、それを高度に保証するうえで永住外国人への地方参政権付与は欠かせない。参政権獲得運動をねばり強く再構築していく。
創団70周年が韓日各界の祝福の対象となり、多様な立場にある同胞を糾合して新たな活力を引き出す場となるよう総力を傾けよう。
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重点方針
幹部力量開発 不断に
16年度は創団70周年記念事業を最重点におき、「韓日友好・共生促進」および「同胞生活支援」を重点方針とする。「次世代育成」「組織改革・強化」の主要課業は、70周年事業の一環に組み入れ、質量ともに充実を期す。
次世代育成では、オリニ・ジャンボリーを過去最大規模で開催するほか、土曜学校、臨海・林間学校、冬季の集いなどオリニ事業の拡充をはかる。近隣地方本部それぞれの地域的な特性を生かして共同運営する事例が増えた。教育効果の大きいこの方式をさらに広げたい。中学・高校生および大学生を対象にした母国サマースクールも規模を拡大して実施する。
合わせて、次世代が在日同胞としての誇りと祖国との絆を培うためにも、祖国に多大な貢献を果たしてきた在日同胞の歴史を教科書に記載するよう、韓国政府および関係者に多角的な働きかけを行う。
組織改革・強化は多様な人的資源の統合を通じた基盤確保を柱に進めたい。組織から遠のいた団員、日本国籍者、新定住者、総連離脱同胞を主な対象に、戸別訪問を日常的かつ集中的に行い、潜在基盤を掘り起こしていく。
組織の改革・強化は幹部・活動者の資質に負う要素が大きくなっていることにかんがみ、集中戸別訪問は中央・地方本部および支部幹部が合同で実施し、相互啓発の場としても活用する。また、リーダー養成セミナー(組織学院)の地方教室を充実させるとともに、地方本部の各級幹部を対象とする研修を前期・後期に分けて行い、幹部力量の向上をはかる。
■創団70周年記念事業
記念事業は有機的な連関のもとに、日本国内はもちろん韓国においても展開する。70年の歩みを再照明するとともに今後の使命を打ち出すことで、本団の存在意義を内外に示すものとしたい。
未来創造フォーラム
昨年末に開催した「未来創造フォーラム」では、大きく変化する在日同胞社会に対応すべく本団をどう改革するか、有識者による忌憚のない意見交換を行った。これを起点に検討委員会を毎月、シンポジウムを数回開催し、改革方案を創出する。
次世代1000人母国訪問
本年はオリニ・ジャンボリーの実施年であり、オリニ500人の規模で行う。中学・高校生、大学生のサマースクールは合わせて450人を予定。このほか青年会による300人規模の青年訪問団派遣を支援する。
記念式典
10月25日に東京都内の会場で、多数の韓日貴賓を含め1000人規模で開催する。未来創造フォーラム、次世代育成、組織強化の各事業の成果を反映させ、在日同胞社会の求心体である本団の位相を誇示し、韓日善隣友好の必要性を確認し合う機会とする。
在日同胞・民団史の編纂
「在日同胞とともに歩んだ民団70年史」(仮称)の発行を準備する。早期に編纂委員会を設立し、100年におよぶ在日同胞社会と70年の本団の歴史を連結させ、体系的に整理して活用価値のある資料として残したい。
本国との連帯強化
ソウル(5月16〜27日)をはじめ主要都市で在日同胞写真展を開催し、在日同胞が本国の発展にどのように寄与してきたのか広く知らせたい。また在日同胞社会の生成期から現在までをまとめたドキュメンタリーを制作・放映し、在日社会の特性と本団の存在を韓国社会に広くアピールする。これらを通じて政府・国会および当該機関の関係者に在日同胞史の教科書記載を求めていく。
■韓日友好・共生促進
韓日関係は現在、3年半ぶりの首脳会談が実現し、慰安婦問題で歴史的な合意がなされたのを受け、この合意の早期履行を通じていっそうの発展を期すときにある。
日本各地の自治体や市民団体と力を合わせ、引き続き草の根交流の深化を追求するとともに、本団が運営する韓国語講座や各種文化教室、「10月のマダン」など常設機構や恒例行事を地域社会により広く提供し、相互理解を促進するテコとして活用したい。また、これらを創団70周年事業の一環としてグレードアップするよう奨励する。
こうした基礎活動を持続的に推進しながら以下の重要課業に尽力する。
朝鮮通信使の世界遺産登録
韓日共同で登録申請書を3月に提出する予定であり、来年夏の審査で好結果を出すには、両政府の積極的な支援はもちろん両国世論の熱意が欠かせない。「朝鮮通信使縁地連絡協議会」に加入している本団も積極的な役割を果たし、韓国の政府および市民社会に熱意ある呼応を求めていく。
ヘイトスピーチ根絶
同胞集住地区である大阪市議会が全国に先駆けてヘイトスピーチ抑止を目的とする条例を採択した意義は大きい。本団はその波及効果を注視しつつ、人権擁護委員会を中心に国会による規制法案の早期立法化を目指す。
地方議会における意見書採択の加速、条例の制定促進に向け、陳情活動だけでなく地方議員や自治体関係者との学習会などを重ねる一方、各政党、有力国会議員、法務省・法務局への要望活動を強化する。国連などを通じて国際世論の喚起を図り人権委と日本市民団体が共催するセミナー、シンポジウム、「ヘイトスピーチの根絶に向けた20のQ&A」の改訂版発行などを通じて啓発に努める。
地方参政権の獲得
経済のグローバル化にともない、国境を越える人的移動は時代のすう勢になって久しく、永住外国人の生産性は地域の活力源ともなっている。地方参政権付与は永住外国人に、模範的な市民たろうとする意欲をいっそう高め、地域社会に貢献する道を広げるものだ。本団は、もっとも歴史のある永住者団体として、地方参政権付与を求めるに至った原点に立ち返り、主要政党など関係要路にねばり強く要望していく。
■同胞生活支援
就職・結婚・福祉
就職支援は韓商、韓信協、駐日韓国企業、大手・中堅の同胞企業、韓国と協力関係にある日本企業との連携を密にし、在日子弟や韓国からの留学生を対象に就職フェアを東京で開くとともに、地方本部による開催を推奨する。
婚活支援については地方本部、婦人会、青年会などによる個別事業を支援するとともに、ここ数年で恒例化した地方協議会単位での開催をはじめ、ニーズに即した企画を奨励する。
福祉では敬老行事や相互扶助事業の充実化はもちろん、高齢者同士あるいは若者との交流の機会を広げていく。戸別訪問活動を通じて独居高齢者の実態把握に努め、適切な支援に努める。
生活相談センター
9地方で稼働している「みんだん生活相談センター」個々のレベルアップと各センター間の円滑な協力体制の構築をめざす。専門相談員の拡充をはかり、巡回相談を実施するのと合わせてセンターの全国化を推進する。
脱北者支援センター
韓日の関係団体とともに、脱北者が生活向上に意欲的に取り組み、交流を通じて横の連携を強め自主的な活動が行えるよう多角的にサポートする。また、北韓人権問題に関するシンポジウムや脱北者証言集会が各地で開催できるよう支援する。
旅行者支援センター
韓国外交部の領事コールセンター、駐日公館は言うまでもなく、専門家で構成する「みんだん生活相談センター」との協力をいっそうシステム化し、サービスの向上はもとより多様なアクシデントにも対応する。
慰霊・顕彰事業
「長崎韓国人原爆犠牲者慰霊碑」の建立が早期に実現するよう支援する。関東大震災および強制労働などの現場で犠牲になった同胞の慰霊をつつがなく執り行い、日本市民団体とも協力して遺骨の発掘・安葬に努める。
(2016.2.24 民団新聞)