辛容祥中央常任顧問は第65回定期中央委員会のあいさつで、「多くの民衆が飢えて死んでいくのに、3代世襲を進め、金正日国防委員長の生日を祝うために莫大な浪費をいとわない北韓独裁は同族として恥ずかしい」と糾弾、「在日同胞は一つになって、世界で最も不幸な北韓民衆を救わねばならない」と強調した。
国連や米国など敵対国にもなりふり構わず食糧支援を要求する一方で、豪華な生日祝いをさせ、一族を豪遊させる金正日の実態は、日本でも詳しく報道されてきただけに、中央委員たちは、同族としての怒りを新たにしていた。「まず、総連同胞を刺激し、行動を起こさせることだ。傍観は許されない」との声が広がった。
本紙にはこのほか、韓国の北韓問題の専門家からも金正日の生日騒動に関連する寄稿が相次いだ。その一部を要約して紹介する。
国際社会が告発 都希倫(反人道犯罪調査委員会事務総長)
1人の生日を祝うために、党の高位級幹部から人民学校の児童に至るまで、どれほど辛い思いをしているか。外交官でさえ、割り当てられた生日資金や贈り物準備のため、偽造ドル紙幣、偽造タバコ、麻薬などで外貨稼ぎに血眼になっている。発覚して国外追放になれば、革命化教育という粛清が待っている。
北住民たちは金正日を「豚野郎」と罵り、肖像画も破かれているという。金日成の王朝が崩れ始めた何よりの証拠だ。
バルカンの独裁者・ミロシェビッチを捕らえ獄死に至らせた国際刑事裁判所(ICC)に、金正日は告発された。すぐにも調査が始まるという。これは何を意味するのか、本人もよく知っているはずだ。いまや金正日は、世界のどこに行っても隠れるところがない、どこもかしこも監獄でしかない、ということなのだ。脳卒中を患い、衰えた肉体を引きずりながら、頼りない末息子を眺め、震えているくらいなら、潔く退くべきではないのか。
従北勢力も審判 韓基洪(社団法人「北韓民主化ネットワーク」代表)
かつて、金正日の生日には、幹部以外の一般住民にも各種の贈り物があった。しかし今回は、こうした「施し」さえ見る影もなく、住民たちも期待していない。飢えを我慢できず、住居地域を離脱してコッチェビや火田民になる住民が増えている。
韓国の従北左派はそれでも北韓を擁護し、3代世襲についても「干渉する問題ではない」との態度だ。むしろ、食料不足も李明博政府のせいだと主張する。落ちるところまで落ちた。
北韓にも必ず民主化の波は起きる。住民は市場に依存しなければ生きられず、市場の活性化は必然的に情報の流通を促す。携帯電話の所有者も30万人を超えた。若者を中心に韓流現象も広がっている。歴史の大きな波が起きた時、北独裁と一体の従北勢力はどう審判を受けるのか。
次は金正日の番 金英秀(西江大教授)
金日成と会って影響を受け、国を滅ぼし、身をも滅ぼしたのは、今回のムバラク以外にも、ルーマニアのチャウシェスク、ジンバブエのムガベがいる。長期独裁の果てに世襲を企て、無残な最期を迎えた。
次は金正日政権か? その必要条件は十分すぎるほどある。しかし、北韓ではサイバーネットワークが機能しない。民心を束ねる手段がない。独裁政権の統制力は弱化したが、なお強力だ。
閉鎖の壁に穴を開けなければならない。エジプト革命の動きも、住民の間では静かに、着実に口伝えで広がっている。北住民は「南朝鮮」に対する関心は極めて高い。韓国の最新の流行を追いかけている。自分たちはなぜ、こうも貧しいのかを知っている。
外部情報を北住民に注入し、民心を形成することは十分に可能だ。いかなる独裁も結局は、民心に屈服する。韓国側のビラ作戦に敏感な反応を見せる北韓は、それを良く知っている。
(2011.2.23 民団新聞)