韓国の大学では教授会の後、先生方と一緒に食事をすることが多い。私が勤めている大学は江原道の春川市にある。春川の名物は何といっても「タッカルビ」と「マックッス」だ。
「タッカルビ」は、鶏肉とキャベツ、サツマイモなどを甘辛いタレで味付けした鉄板焼き。また、「マックッス」は、日本の蕎麦と似ている麺料理で、好みによって適量のダシ汁を入れ、酢、砂糖、カラシなどで味付けする。
このような韓国料理の店は、座敷で食事をする所が多い。食事中、私は習慣で無意識のうちに正座をしていることがある。すると、隣の人に「どうしていつも正座なの。足が痛いでしょう。もっと楽にしたら」と言われる。
こんなとき、日本と韓国の食事中の座り方の違いを実感する。
日本では、女性があぐらをかくのは、行儀が悪いこととされているが、韓国では女性が片膝を立てたり、あぐらをかくことも日常的に行われている。
これは、韓国の伝統衣装であるチマ・チョゴリを着ている女性の正式な座り方が、体の前に右膝を立てることとも関係があるのかもしれない。
韓国に来たばかりのころ、食事中の女子学生の座り方を見てかなり驚いたものだ。食事に関する違いは、座り方だけではない。
日本でホームステイをしたり、語学研修に行く学生に、日本と韓国のマナーや習慣の違いについて話をすることがあるが、箸とスプーンの使い方の違いについても話すようにしている。
和食を食べるときは箸だけを使うが、韓国料理ではスプーンがメーンとなる。
そして、和食のときは、お茶碗やお椀を手に持って食べるが、韓国では手に持たずにスプーンでいただくのが礼儀だ。茶碗に口をつけて、お茶漬けを食べるようにかき込んではいけない。
また、お酒を飲むときにも違いがある。韓国では日本と違い、満19歳から解禁になる。 目上の人と飲むときには、後ろを向くように上半身を回し、口元を片方の手で隠すようにして飲むのが礼儀とされている。
そんな韓国の習慣が身についている私は、先日、東京で日本人の先生方と食事をしたとき、「乾杯」と言ったとたん、私はつい、一人だけ盃を持ったまま、上半身を後ろに向けた。
そのとき、周りは「!?」。国によって食事のマナーや習慣もさまざまであり、日頃、体に馴染んだものは無意識に出てしまうものであるらしい。
齊藤 明美
(2011.3.8 民団新聞)