特殊土木「深礎工事」…都工業の都徳述社長
ビルや橋脚、送電線鉄塔、上下水道などの杭基礎工事である「深礎(しんそ)工事」が業務の中心。鋼製波板とリング枠(主にライナープレート)で土留めをしながら、地中深く杭を形成していく。基本的には岩盤のところまで掘り、震度7に耐えうる。
「重量30㌧の大型機械で、25㍍ほどのたて掘りは可能。沖縄から関東まで各地にトレーラーで運びながら、基礎工事だけを請け負う。ボルト締めで円形を組んでいくが、直径が5㍍、10㍍と大きい穴の場合は吹きつけをし、鉄筋を組んでコンクリートを打つ。社員は事務所にほとんどいることはなく、地方に出っぱなしだ」
深礎工事が全体の3分の2を占め、残りが一般の土木工事。道路公団や国土交通省などが発注したものの下請け工事がほとんど。
社員は25人で、09年度売上額は不況のため減少し約3億円。
Uターンし起業
1944年大分県の中津市生まれ。高校卒業後、京都で染色会社などに就職。大阪で深礎工法の会社に10年ほど勤務してから中津にUターン。87年に都工業を設立した。
「昔はつるはしを使い、コンプレッサー(圧縮機)やキックブレーカー(削岩機)で吊ってから3脚を立て、電動ウインチ(巻き揚げ機)で上にあげるという原始的な方法だった。ひとつの現場に5人から10人が必要で、事故も多かった」と振り返る。身長182㌢の「頑健な体躯が財産だった」。
手掘りは非効率的なので、数年で機械を導入した。「人間が土中に入らなくてすむので、事故はほとんどなくなった。現場での事故が一番こわい。頭の中はいつも安全第一」と強調する。
「大切なのは、無事故と工期の順守。事故がないから信用されており、ここまでやってこられた」。現場では毎日朝礼を行い、安全を再確認する。もちろん、「酒の臭いがすれば、現場には出さない」。
高速道路など郊外の現場では、ダイナマイトを使うことがあり、「細心の注意を払っている」。社員にはさまざまな資格を取得させており、ベテランが多い。「現場は男の世界。女性の力でキックブレーカーは使えないからね」
現場で肝を冷やしたことが一度あったという。「30年ほど前、博多区役所の基礎工事作業をやっていたときのこと。穴を深く掘っていく中で、現場の酸素を測定すると、不足していた。気づかなければ地中で作業する人の命とりだった。急いで大きな送風機を準備してこと無きを得た」
民団中津支部の支団長などを経て、3年前に大分県本部の団長に就任、今春、再選された。「息子が会社を事実上仕切っているので、民団活動に時間を割くことができた」
留学生と交流も
大分県下の大学には韓国人留学生1000人近くが在籍する。「光復節などイベントのたびにサムルノリやテコンドーの実演をしてもらい、交流を深めている。おかげで1000人は集まる」
現在の悩みは韓国教育院の閉鎖(8月まで)。「100人ほどが学ぶ韓国語講座は継続したい。韓日友好の拠点でもあるので、なんとか教師を確保しようと考えている」
◆(株)都工業=大分県中津市大字大悟法72‐1(℡0979・26・2080)
(2011.5.25 民団新聞)