北の長距離ミサイル発射計画は中断すべき
諸成鎬(中央大学・法学専門大学院教授)
北がまた事故を起こそうとしている。金日成生誕100年の4月15日を迎えるにあたり、強盛大国建設誇示のために「光明星3号」(実体は長距離ミサイル)発射を強行しようとしていることだ。一言で、このような行動は、国連体制下で許されないことだ。政治・外交的に不適切であり、北の将来のためにも望ましくない。
一般的にミサイルの開発と打ち上げ自体には国際法の違反ではない。ミサイル技術統制体制(MTCR)という国際規定があるものの、拘束力を持つ条約ではない。北韓はこれに加入もしてない。
それでも北韓の場合は事情が違う。2006年10月、第1次核実験直後、国連安全保障理事会(安保理)が決議1718号を採択し、北の弾道ミサイルの発射を禁止したからだ。北韓は今回打ち上げる長距離ミサイルを人工衛星だと言い逃れしたり、「人工衛星打ち上げや宇宙の領域探査は、主権国家の固有の権利」と主張しながら、自分たちの行為を正当化する公算が大きい。
しかし、北にはそのような権利は認められない。2009年6月、安保理は第2次核実験に対する制裁のため、決議1874号を採択し、「弾道ミサイル技術を使用した、いかなる発射も禁止する」と明示したからだ。この2件の安保理決議は、すべて国連憲章第7章のもと採択されたもので、憲章第25条の規定により、国連加盟国である北韓を法的に拘束できる。
さらに、「光明星3号」の発射計画発表は2月24日、北京での米・北高官級会談で引き出された、北の長距離ミサイル発射の猶予合意をたった16日間で覆すことになる。このような約束放棄は、北米関係改善と韓半島の非核化進展のために6カ国協議の関連国が昨年7月以降から展開してきた努力に水を差すものだ。また、韓半島の平和を大きく脅かす「政治的挑発」に値する。
もちろん過去にも北韓は、ミサイル関連の合意を無視したことがある。1999年。米・北ベルリン会談による「ミサイルの試験発射猶予合意」、2000年、米・北共同コミュニケの「会談中、長距離ミサイルの発射を停止」、2002年、日朝平壌宣言の「ミサイル発射の保留延長意向表明」のすべてが結局守られなかった。
しかし、今回のようにインクがまだ乾かないうちに自分が直接署名した合意を何の遠慮もなくひっくり返せば、将来、北の「言葉」と「合意」を信じる国が地球上で何カ国になるのか疑問である。国際社会での信頼を積み重ねても足りない時に、北韓の逆行は心配極まりない。血盟関係にある中国さえも張志軍(外交部、商務部部長)は、池在龍・駐中国北韓大使を16日夜に召喚し、強い懸念と反対の意を表明した。
「光明星3号」発射は民族的次元から見ても残念でならない。北韓はこの長距離ミサイルの製作と発射台の建設に約8億5千万ドルを費やしたと推定されている。これは現在の穀物相場(1トン当たり600ドル)で120万トンほどの米を購入できる金額だ。
住民たちの飢えを和らげることができる金を「先軍空中ショー」で飛ばすとは、理解に苦しむ。この他にも北韓は「4・15行事」の時、海外の賓客を招き、祝賀行事、特別配給のために10億ドルを投入する予定だという。このような乱費は、その後の北韓住民に大きな犠牲と負担として作用するものであり、最終的には民心離反と金正恩政権の不安定を招くことにもなる。
国を見かけ倒しで維持することはできない。金正恩は住民たちの疲弊した生活を取りまとめることから学ばなければならない。民族の自尊心は、「食の問題」を自ら解決して米国と妥結した国際合意を誠実に履行してこそ保つことができる。北は今、国際社会が示す懸念と警告の重大性を深く認識しなければならない。
(2012.3.28)