在日3世代表に「オッケトンムの会」市民と共に活動展開
元在日同胞脱北者どうし、支え合って生きていこうと、今年に入って自ら新たな支援組織「オッケトンム〜『北』から帰った人たちを支える会」を立ち上げた。「オッケトンム」とは「肩を組む友だち」という意味。日本人と在日同胞を仲間に迎え、当事者が夢と希望を持って生きられるネットづくりをめざしている。
偏見一掃へ料理教室…子弟の自立へ「寺子屋」も
日本社会の脱北者に注ぐまなざしは、「北朝鮮から来た」「近づきたくない」という"負の印象"に支配されがち。同会の世話人を担う元在日同胞脱北者の韓錫圭さん(仮名)は、「脱北者も中国の朝鮮族と自らを偽るなど、心を開きにくい状況がある」という。
こうした偏見を取り除くため、会が3月に初開催したのが料理教室「オッケトンム・キッチン」だった。都内のマンションの1室を会場に北韓で育った同胞が講師を務め、家庭料理を教えた。目的は料理ではなく、会話を通して隣人としての理解を深めてもらうのが目的。料理教室に参加したことで支援の輪に加わった日本人もいる。
日常的には日本に入国して間がない脱北者のため、比較的定住歴の長い脱北者5人が銀行口座の開設、電車の乗り方やスーパーでの買い物を手引きするシステムをつくっている。このほか、独自のネットワークを駆使して、就職の斡旋にも取り組む。
韓さんは59年、新潟から北送第1船に単独で乗り込んだ。当時まだ17歳だった。清津に到着するや否や、「だまされた」と思い知らされたという。総連の宣伝を通じて「社会主義祖国」へのあこがれを膨らませていただけに落胆も大きかった。03年に脱北、04年に日本への入国を果たした。
脱北したのは、北送同胞がたどった末路を広く知らせなければとの使命感からだった。それは『日本から「北」に帰った人の物語』(新幹社刊、07年)を著すことで果たした。目的を果たすと、脱北者のため、なにか力を尽くしたいと思うようになり、在日3世の小牧美和さん(50)を代表に昨年12月、「オッケトンム」を立ち上げた。
4月1日からバイリンガルの日本人ボランティアを講師に、「寺子屋」を開設。脱北同胞の子弟のために英会話や学習支援に取り組んでいる。今後はウリマルも教えていくという。
(2012.4.12 民団新聞)